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膵臓がん研究の最前線: 遺伝子と家族性膵がんについて プリント メール
作者 Administrator   
2008/07/29 Tuesday 01:49:08 JST

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 膵臓がん研究の最前線: 遺伝子と家族性膵がんについて

 

ジョンホプキンス大学Sol Goldman Pancreatic Cancer Research Center所長、PanCANの科学諮問委員会メンバーでもある Ralph Hruban氏に膵臓がん研究の最前線、特に膵がんに関連する遺伝子異常と早期発見・治癒が期待される家族性膵がんの研究についてお話を伺いました。

 

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: どのような経緯から膵臓がんの研究に入られたのですか。

 

Hruban(以 下、H):ジョンホプキンス大学病院の前外科部長であったJohnCameron先生の献身的な努力によって、当時20%だった膵臓がん外科療法の死亡率 が、2%までに改善されました。その結果、全国からジョンホプキンスに膵がん患者が集まるようになりました。私は、すぐにこの疾患を研究する機会に恵まれ ていることに気づきました。

 

 A: 医師が患者にがん告知するにあたり、一番患者にとり衝撃の大きいがんが膵臓がんだと思いますが、この疾患についての統計データを教えていただけますか。

 

H: 米国においては、米国癌協会(ACS)の推計によると今年37000の人が膵臓がんであると診断され、そのうち約33400人が膵臓がんで亡くなります。膵臓がん患者の5年生存率は僅か4%しかなく、米国においては男女とも主要ながん死亡率の4位になっています。致死的ながんであるということだけではなく、大変苦しい病気でもあります。古典Cedipusのなかで、Giovanni Battista Moginieというイタリア人医師が膵がん患者の疼痛について「生きながらにして、犬に八つ裂きにされているような痛み」と説明していますが、この患者による苦しみと惨めな生存率との組み合わせは想像を絶するものがあります。膵臓がんが最悪の疾患といえるのは、その診断が非常に困難なためです。

 

 

A: 前述の外科療法も含めて、少なくともホプキンスでは膵がんの治療成績は改善されたといえますか。

 

H: もちろん外科療法は格段に進歩していますので、手術療法の候補となる患者の生存率はかなり改善しました。課題は、大部分の膵臓がん患者が膵臓から他の臓器へがんが広がった段階になるまでクリニックには来ないことです。診断されたときにはすでに手術の対象外になっています。そのため、ジョンホプキンスでは多くの研究資源を膵臓がんのファンダメンタルの理解に投下し、(進行がん)患者のケア改善にむけて努力しています。

 

 

A: 主症状としては、恐ろしい「無痛性黄疸」があげられます。進行がんとして発見される前の段階では、それ以外に主だった症状はないのでしょうか。

 

H: その通りです。患者が訴える上腹部痛、背部痛、無痛性黄疸などのさまざま症状は、がんが肝臓や他の臓器に転移した後など、かなり進行した段階でしか現れません。そのような状態になると有効な治療ができません。

 

 

A: リスクファクターについてお伺いしますが、より積極的にアプローチすべき人々を同定するために使えるリスクファクターには何がありますか。

 

H: まず、年齢は重要なリスクファクターです。膵臓がん罹患率のピークは70代から80代にみられます。多くのケースは60代から80代に集中しています。40代以前の人にはほとんどみられません。また、女性より男性により多くみられます。男性と女性の比率は1.3対1です。興味深いのは、カソリック系やプロテスタント系よりもユダヤ系に多くみられるという報告もあります。また、生活習慣も明白に重要な役割を果たしています。喫煙は一貫して膵臓がんのリスクファクターとして同定されています。多くの研究では、喫煙は膵がんリスクを2倍にすると報告されています。喫煙年数とリスクを関る用量依存の関係もみられます。喫煙者には幸いなことに、10年以上禁煙することにより普通の人と同等まで膵臓がんのリスクを軽減することが可能です。いくつもの食事に関連するリスクファクターも示唆されています。牛肉、豚肉、脂肪の多い食物、総カロリーの高い食事はリスクを高め、野菜・フルーツの多い食事は逆に保護すると言われています。

 

 

A: 総カロリーが高いということは、肥満体とか運動不足の人はリスクが高いということですか。

 

H: BMIが30以上、運動不足は、膵がんのリスクを高めるとい言われています。不幸なことに私のように背が高いことも膵臓がんのリスクファクターのひとつとされています。

 

 

A: 体重とか喫煙とかについては確かに行動様式を変えることで対応できると思いますが、人々にスクリーニングを勧めるための特定ファクターとはいいがたいと思いますが。

 

H: スクリーニングがその人のためになるか否かは、家族歴が適用の判断材料となります。我々の研究は、膵臓がんは基本的には遺伝子の疾患であるという仮説がベースにあり、がん関連遺伝子の先天的また後天的な変異が原因で起きた疾患と考えています。すでに体細胞変異した、あるいは後天的に変異した遺伝子をいくつも発見しています。p16がん抑制遺伝子、KRASがん遺伝子、p53、DPC4、その他があります。

 

 

A: 家族のなかから何人が膵臓がんに罹ると有意に高いリスクと考えられますか。

 

H: その質問に答えを出したいくつかの研究が報告されています。2004年、アイスランドの素晴らしい研究がPublic Library of Science誌に発表されました。アイスランドでしかなしえなかった研究で、アイスランドの癌登録データを利用して、1955年以降に発生したがんと687000人のデータが保存されている遺伝子ロジックデータベースをリンクして解析しました。第一度近親者の膵臓がんと膵臓がんに罹るリスクを調査した結果、家族の1人が膵がんにかかると、自分自身が膵臓がんに罹るリスクは2.3倍に増えることが解りました。

 

ジョンホプキンスでは1994年に「全国家族性膵臓がん登録(National Familial Pancreatic Tumor Registry」を設立し、多くの家族の方々に登録していただき、集合体として膵臓がんの発現に関与する遺伝子を特定する研究を始めました。今日では2400に近い家族がこのがん登録を通してフォローされています。膵臓がんの家族歴がある方には登録してもらいたいと思います。

 

 

A: どのようすれば登録できますか。

 

H: ジョンホプキンス大学に連絡してください。この登録データベースを通して、これらの家族をプロスペクティブに調査することが可能となりました。すでに登録された家族のなかから53件の膵臓がんが発見されています。このデータベースを使うことにより、我々は膵がんリスクを定量化することができるようになりました。家族のメンバーの2人に膵がんがある場合、膵がんのリスクは6倍に増加することが判明しました。第一度近親者に膵がんが3人以上でると、膵がんに罹るリスクは32倍になります。多分いちばん有名なケースは、カーター前大統領で、姉妹2人、弟、そして多分父親を膵がんで失くしています。

 

 

A: それは相対リスク(RelativeRisk)ですが、絶対リスク(AbsoluteRisk)にかえるとどのような感じになりますか。

 

H: 膵臓がんは、大変致命的な疾患ですが、総人口でみると、比較的まれな疾患です。最高のリスクの人々は、RRが32倍のグループで、300/10万人年となります。このレベルになるとスクリーニングが可能な領域に入ってきます。もしかすると主な原因は遺伝子ではなく環境かも知れません。ピーナッツ農園を営む人は膵臓がんに罹るリスクが高いのかも知れません。カーター家の膵がん発生率が高いのもその理由からかも知れません。我々は多くの研究資源と投下して、原因は環境なのか遺伝子なのかを調べています。

 

初期の頃、分離比分析(Segregation Analysis )という統計的な手法で、親族の間で観察された疾患のパターンが主要な遺伝子によって遺伝可能か調査したことがあります。分析の結果、膵臓がんが多発する家族の遺伝を説明する最もシンプルで要領を得たモデルは、常染色体優性遺伝(Autosomal Dominant)によるレアな対立遺伝子(Rare Allele)であることが判明しました。このように膵臓がんには遺伝子のベースがあるようです。そこで我々はその遺伝子がなんであるか研究しています。

 

 

A: 研究がここまで進んでいるということは信じられないことですが、がん発生については、環境あるいは遺伝子がどの程度関与しているかまだ解明されていないのですか。

 

H: そうです。しかし、すでに家族性膵臓がんの遺伝子については解ってきています。遺伝性乳がん卵巣がん症候群を起こすBRCA2という乳がん遺伝子、P16という家族性メラノーマ多発性症候群(Familial Atypical Multiple Mole Melanoma Syndrome (FAMMM))を引き起こす遺伝子、冒された人は非常に若い年齢で膵炎を患う遺伝性膵炎(Familial Pancreatitis)の遺伝子、唇・頬粘膜に黒色班、消化器官にポリープ・Hamaratomasができるポイツ・ジェガース腺腫性症候群(Peutz-Jegher's Syndrome)。これらすべての症候群は膵臓がんのリスクを増大することがわかっていて、そのリスクも定量化することができました。例えば、BRCA2遺伝子異常がある個人が膵臓がんを患うリスクは通常の3~10倍です。それは人の一生において膵臓がんにかかるリスクが5%あることを意味します。FAMMMをもつ個人が膵臓がんに罹るリスクは通常の20~30倍となります。生涯リスクは10~16%と上昇します。さらに家族性膵炎の遺伝子をもつ人は、50~80倍のリスクとなり、膵臓がんに罹る生涯リスクは25~40%となります。

 

 

A: 非常に高いリスクですね。

 

H: いちばんリスクが高いのは、ポイツ・ジェガース腺腫性症候群(Peutz-Jegher's Syndrome)の患者で、RelativeRiskは通常の100倍、膵臓がんに罹る生涯リスクは60歳までに36%にまで上昇します。アメリカの漫画にでてくるクマゴロー(YogiBear)は口癖で「未来は予測できない」と言っているが、膵臓がんの場合、遺伝子を通してある程度予測ができるようになってきました。(続く)

 

SOURCE: Interview by Lee Friedman, MD of  XM 233ReachMD.com, 2008

最終更新日 ( 2009/02/09 Monday 07:25:29 JST )
 
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