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臨床試験:膵癌ワクチン臨床試験始まる プリント メール
作者 Editor   
2009/04/05 Sunday 23:28:29 JST

 臨床試験

 

■膵臓がん治療用ワクチンの臨床試験始まる(日本外科学会学術集会より)

 

 膵がんの血管新生を標的としたワクチン療法によって膵臓がんの進行を遅らせようという臨床試験の第Ⅱ/Ⅲ相試験が全国の25箇所の医療機関で開始されました。第Ⅱ/Ⅲ相試験は新薬臨床試験の最終段階に相当する試験で、日本国内のみならず世界中が注目する試験です。この試験の詳細は、42日から4日まで福岡で開催された第109回日本外科学会定期学術集会で報告されました。試験の中心になっているのは、和歌山県立医科大学第2外科教授の山上裕機先生、宮澤基樹先生と東京大学医科学研究所教授の中村祐輔先生のグループです。


血管新生を標的にしたワクチン

 

このワクチンは膵臓がんが行う血管新生をストップさせることを狙っています。がんは急激な増殖を続けるために栄養と酸素を必要とします。そこで、がん細胞自らが血管を新生させる物質を分泌します。この物質の1つが血管内皮細胞増殖因子(VEGF)というものです。VEGFが血管にある“受容体”に結合すると、「血管よ伸びろ」という命令が血管細胞に送られ、血管の新生が起こります。

 

がんに伸びる血管は栄養や酸素以外に抗がん剤の通り道にもなります。しかし、がん細胞が作った血管は、あまりできがよくなく、孔がたくさんあいていて、抗がん剤も血管の外に漏れ出してしまうことがあります。VEGFの働きを止めると、抗がん剤の通りやすい、しっかりした血管が残ることになり、がん化学療法には好都合と考えられています。

 

 ワクチンはVEGFを受けて血管の増殖指令を発する受容体の1つ、VEGFR-2を標的にしています。化学合成したVEGFR-2の一部を、患者さんに注射します。すると、患者さんの体内でVEGFR-2をブロックする抗体が生み出され、VEGF-VEGFR-2の結合を邪魔します。結合できないと「血管よ伸びろ」の指令が血管細胞に伝わらず、血管新生が起こらないことになります。それだけでは膵臓がん細胞の勢いを止めるには不十分なのでゲムシタビンを併用します。

 


 

安全性のハードルをクリア

 

 日本外科学会学術集会では、21人の患者さんの協力を得て行われた安全性を検証する第Ⅰ相試験の結果が報告されました。対象は、ステージⅣ期の切除不能膵臓がんの患者さん21人で、ゲムシタビンとワクチンを併用しました。ゲムシタビンは一般的に行われているように1000mg/m2を3週投薬1週休薬をしながら、ワクチンを週1回注射して有害な副作用の出現と適切な用量の探索が行われました。やや重い好中球減少が52%の患者さんに、白血球の減少が10%の患者に見られましたが、副作用を理由に試験を中止した患者さんはいませんでした。血管新生を妨害する薬ですから、出血などの副作用も心配されましたが、そうした現象も見られませんでした。以上の結果を検討して、同研究チームは「安全性が確認された」と結論しました。

 

また、一時的な腫瘍の縮小または、増大の抑制を目安とした有効性の評価では、66.7% の患者さんで腫瘍の縮小または不変が認められました。被験者の数も少なく、統計学的な解析には限界がありますが、ゲムシタビン単剤を使った多くの試験の成 績を上回る効果で、ゲムシタビンと併用することによって延命させる効果が「ありそう」な結果といえます。でも、本当に効果を判定するためには、多くの施設 と患者さんが参加した臨床試験を実施しなればなりません。

 


延命効果を検証する試験始まる

 

 本当に、こうした結果を多くの患者さんで再現できるのかどうかを確かめるために、今年1月から本格的な第Ⅱ/Ⅲ相試験が全国で始まりました。試験の名前はPEGASUSPC(ペガサス・ピーシー)といいます。この試験はゲムシタビン+ワクチンが本当に現在の標準治療の1つであるゲムシタビン単剤をしのぐことができるかどうかを、延命効果の有無を指標に確認するための本格的な試験です。

 

 現在、VEGFの働きを止める薬が登場し、大腸がんや乳がん、腎細胞がんなどでは目覚しい成績を上げています。ところが、残念なことに、これら既存の薬は膵臓がんへの延命効果がないことが最近3年の海外の臨床試験で相次いで確認されてきました。しかし、これらは、モノクローナル抗体や低分子化合物であって、和歌山医大・東大のワクチンとは根本的に異なるものです。結果が世界的に注目される所以です。

 

 この試験にはどんな患者さんも参加できるわけではなく、免疫反応が誘導できる白血球の型がマッチする必要があります。現在、試みられているワクチンはHLA-A2402という型を持つ患者さん以外では効果はありません。ワクチンの接種を受けるためにはこうした白血球の型を調べる必要もあります。 

 

  今回の試験は、切除不能進行膵臓がん患者さんを対象にしていますが、本当にワクチンの底力が発揮できるのは、術後に使用する場合だと多くの専門家は見てい ます。術後に打って、再発を抑制することができれば、膵臓がんの治療成績の向上が期待できます。今回の試験はその最終的なゴールを目指した一里塚といえそ うです。 

 

(小崎丈太郎=PanCANジャパン・ボランティア)

最終更新日 ( 2009/04/09 Thursday 08:26:53 JST )
 
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