topmessagedonation001

すい臓がんについて知る

Take Action

druglag-petition

Tell us your story

サバイバーストーリー

2014年9月8日  的場 直子 43歳(膵内分泌腫瘍患者歴8年、米国在住23年)

 

matoba

 米国でのCAPTEM治療体験記(Revised 9.8.14)


私が初めてCAPTEMという治療薬の名前を耳にしたのは、もう6年以上も前になる2008年の春頃だったと思います。厳密に言うと、当時はCAPTEMという言葉は使われておらず「ゼローダとテモダールの併用治療」とだけ呼ばれていました。


私は2006年の秋に進行性膵内分泌腫瘍の告知を受け、数ヶ月の薬物治療の後、2007年の夏に大規模な腫瘍減量手術を受けていました。この手術により、膵臓の原発腫瘍は全て取り除かれましたが、すでに肝臓全体に広がっていた複数の転移は、一部を除きまだ残ったままでした。


手術後は体力や健康状態が回復するのに時間が掛かり、1年近くがん治療を再開できませんでした。その間残りの肝転移はどんどん大きくなり、そして新たに背骨に2カ所、骨転移らしい影も現れていました。もうそろそろ治療を開始しなければまた危ない、という2008年の春、スタンフォード大学病院の私の主治医から、初めてCAPTEMの話を聞きました。


その時は「正式に承認されている内分泌腫瘍(NET)の治療薬ではないが、オフラベルでNETの治療に使われている」「他の種類のがん(脳腫瘍、大腸がん、乳がんなど)ではすでに使われている抗ガン剤なので、副作用やリスクのデータは既にある」「NETに対しても、よい結果が報告されている」といった説明だったと思います。そしてその時主治医がぼそっと呟いた言葉がずっと頭に残っていました。「どこかのクリニックでは奏功率70%以上とか凄い結果が出てるらしいが、それはちょっとにわかには信じ難いですけどね。」私も「いくらなんでもそれは良過ぎるよな」なんて頭の中で思っていました。


結局、この時はもう一つのオプションとして主治医が挙げた、ヨーロッパでのPRRT治療を選びました。そして2008年の10月から、スイスのバーゼルでの治療が始まりました。この治療は功を奏し腫瘍が著しく縮小、バイオマーカーも改善されて、一時は衰弱していた体もすっかり元気になりました。その後約3年半、計5回の治療でこの状態を維持し、QOLの高い生活を送ることができました。
そして2度目にCAPTEMの話が出て来たのが2012年の春でした。最後のPRRT治療の効果があまり持続せず、腫瘍がやや増大し活発になり始め、機能型の腫瘍のホルモン過剰分泌がまた盛んになりはじめた頃です。主治医はPRRT治療を続ける事にベネフィットは余りないという結論に達し、治療プランを見直す事になりました。


4年前は臨床データも少なかったためか、あまり強くCAPTEMを勧めなかった主治医ですが、今回は違っていました。この頃にはアフィニトールやスーテントといった新薬がすでに正式なNET治療薬として承認されていたので、てっきりそのどちらかになるだろうと思っていたのですが、主治医は今だ未承認のCAPTEMの方を強く支持しているような口ぶりでした。


「アフィニトールやスーテントは、どちらかと言えば、腫瘍を小さくするというよりは、増悪を抑えるタイプの薬だと思います。貴方の腫瘍はまた大きくなって、ホルモン分泌も活発になってきているので、できれば小さくしたい。小さくする確率が一番高いのはアフィニトールやスーテントよりもCAPTEMです。」


主治医の言葉は私にはすんなり納得できました。というのも、この4年の間で、主治医以外からも、米国のNET患者会の掲示板や、また同病の患者さんとの会話を通してCAPTEMの評判を色々聞いていたからです。多くの患者さんが「CAPTEMは凄い」「腫瘍が見えなくなるくらいまで小さくなった」「CAPTEMのお陰で命が延びた」と言っているのをいくつも耳にしていました。


私は米国での患者セミナーやミーティングにはいつも積極的に参加するように心がけていますが、そこで出会う患者さんのデモグラフィーは幅広いです。性別を問わず、患者の年齢層も私のように30代で発病した人や、50〜60代の人たちまで様々です。人種もそうです。白人だけでなく、ヒスパニック系、中東系、東南アジア/東アジア系の人たちも沢山います。米国在住の日本人NET患者も、私以外に2名いました。


私と同じ病院に通っている、香港出身の中国人女性は、私と病状と治療歴がとてもよく似ています。彼女からは「2010年にもう後がない状態でCAPTEMを試し、腫瘍が著しく縮小、症状も改善して命拾いをした」という話を聞いていました。なので2度目に主治医からCAPTEMを提案された時は、全く迷いはありませんでした。ぜひ試してみたいです!ということで2012年5月に私のCAPTEM治療がスタートしました。


テモダールもゼローダも、体重から割り出した分量を経口投与するだけなので、家で簡単に行えて日常生活にも支障が出ず、QOLを維持する事に役立ちました。薬は2週間服用して2週間休みで1クール。テモダールは10日目から14日目の5日間のみの服用でした。


副作用は個人差があると思いますが、一般的には比較的穏やかだと言われています。私の場合も、テモダールを飲んだ最後の5日間はだるさが増し、ゼローダで腹痛が起きる事もありましたが、コントロールできないような激しい痛みや嘔吐などはなく、生活に大きな支障を来す事はありませんでした。また、服用直後にはいつもクレアチニンが一時的に上がりましたが、2週間の休薬後、次のクールが始まる頃にはまた元に戻っていました。


NETはヒストリー的に抗ガン剤があまり効かないことで有名なのですが、CAPTEMの効果の即効性に驚きました。1クールを終了した時点ですでに血液検査の数値にそれが顕著に現れ始めました。治療開始前は、腫瘍の増悪で肝機能の数値が上昇していたのですが、3週間後の血液検査ではすでに数値が下がり、さらにその2週間後には一番高かったALPが700から半分以下の300に下がっていました。


私はpNETの中でもPTHrPというホルモンを分泌するPTHrPomaという稀中の稀な機能型pNETですが、このホルモンが過剰分泌されると、血中カルシウム値が上がります。腫瘍が活発になると、このカルシウム値をコントロールするのが一番のチャレンジでした。CAPTEM開始前は、このカルシウム値が上昇し始め、毎日のように病院で2リットルの生理食塩水の点滴を受けていましたが、1クールでカルシウム値は正常レベルに戻り、点滴も必要なくなりました。


多くの患者さんたちが言っていた「魔法のような効果」を私も実感しました。抗ガン剤が効きにくいと悪評判だから尚更、いとも簡単に効果が現れたことに驚きました。そして3ヶ月後のCTでは肝臓の複数転移が全体的に縮小、7クールを終えた段階ではさらなる縮小があり、PRと判定されました。


またCAPTEMのもう一つの優れた点は持続性があることでした。主治医の話では、患者の中には治療をストップした後でも1〜2年無増悪期間が続くケースがあるそうです。私は短い方でしたが、それでも7クール終了したあと、8ヶ月間無治療で過ごす事ができました。


こういった背景があり、私はCAPTEMのオフラベル使用を強く支持しています。今年の初めに、ASCO-GI2014で、CAPTEM Phase IIの発表があった時も、前代未聞の好成績に十分頷けました。そして、多様なデモグラフィーの米国でこれだけ成果を出している薬なので、日本国内でも早急に検討され、今すぐにでも導入する価値のある治療だと強く感じました。


しかしその後、日本で自費でいいからCAPTEMを試したいと主治医に訴えた患者さんがいらしたのですが、まだ米国でもPhase IIの段階で、効果もまだあまり期待できないし、リスクも高いからとあっさり断られたという話を聞きました。非常に残念に思いました。


Phase IIの報告は氷山のほんの一角に過ぎず、米国ではすでに何年もオフラベルで使用されています。すでに幅広いNET患者層に大きな恩恵をもたらしてる事実が日本ではあまり認識されていないように思えました。


もちろん、CAPTEMが全ての患者を救うミラクルドラッグとは思ってはいません。ですがNET治療に大きな進歩をもたらす可能性を十分持っており、またそのQOLを落とさない便利さ、副作用の比較的軽い安全さ、有効性の高さなど、現代のがん医療に患者が求めているものをほぼ満たしていると思います。


見込みのある治療の選択肢が一つでも増えることは患者にとって大きな励みであり、たとえ今の段階で根治が望めない状態でも、たとえその場しのぎであったとしても、命を繋いで行く事で、患者は未来の医療に希望が持つことができます。私もあと2年、今の治療であと2年頑張れば、その後はまた新しい薬や治療法が必ず出て来るはず、と繰り返し信じながらこの8年間を乗り越えてきました。


微力だとは思いましたが、私の治療経験が少しでも多くの医療関係者の目に留まり、日本国内でのCAPTEM承認の早期実現に役立つ事を願って、この体験記を書かせて頂きました。

Share this post

Submit to FacebookSubmit to Google BookmarksSubmit to Twitter