がんへの新たなアプローチ  アメリカ・ジョンホプキンス大学の挑戦

 

【サマリー】

 

・ジョンホプキンス大学の新たな研究は 「がん細胞を攻撃するのではなく、がん細胞を固くすることによって、人体の他の部位への転移・浸潤を防ぐことができるか」の解明を目指している。

・この研究をしたジョンズホプキンス大学の研究者チームは、4-HAPという分子が、細胞の骨格(細胞内の繊維層で骨格的な働きをする組織)に影響を与えうる可能性があることを突きとめた。

・4-HAPはすでに黄疸の治療に使われている薬の分子である。4-HAPの新たな働きについて、いま、マウスを使ってテストが続けられている。

 

 

【概要(ジョンズホプキンス大バージョン)】

 

・細胞の形のみなもとである「細胞骨格(※)」は、がん、慢性閉塞性肺疾患、変性神経疾患において、同じように多様な条件で変化することが知られている

・ジョンズホプキンス大学の研究者は、薬剤により細胞骨格が変化するかどうかを見るために可能性のある薬をスクリーニングする方法を考案した

・同大の研究者は、がん細胞が転移して、新しい部位にコロニーを形成することができないよう、がん細胞が硬くなる(がん細胞内の細胞骨格が硬く変化する)有望分子を同定した

 

 

(※)細胞骨格(さいぼうこっかく、英語: cytoskeleton, CSK)は、細胞質内に存在し、細胞の形態を維持し、また細胞内外の運動に必要な物理的力を発生させる細胞内の繊維状構造。細胞内での各種膜系の変形・移動と細胞小器官の配置、また、細胞分裂、筋収縮、繊毛運動などの際に起こる細胞自身の変形を行う重要な細胞小器官。

 

「この新しいアプローチにより、多くの薬よりも、より少ない副作用と、薬剤耐性ができにくい可能性のある方法で、がんと闘うことができると信じている」と、ジョンズ・ホプキンス大学医学部大学院基礎研究所のダグラス・ロビンソン細胞生物学教授は述べています。また「我々が開発した新しい検査システムは、多くの他の疾患のための薬を特定するのに役立つと考えている。」とも述べています。

 


■細胞分裂の状態を観察することで「がん細胞の拡大時に変化する細胞の形状」に着目

この研究のプロジェクトは、1997年、ロビンソン氏が博士課程の研究員であったときに考えたアイデアで、細胞が2つに分裂する過程をより深く研究することで、細胞が一般的に形状を変更する方法に光を当てることができるというものでした。がんから慢性閉塞性肺疾患、退行性神経疾患などにいたるまで、細胞の形状に影響をあたえる、この研究では特に、細胞の形状を固定する(かためる)化合物によって、疾患の進行を停止させる可能性があるというものです。

 

 

2008年、この研究の主執筆者であるアレクサンドラ・スーセル氏は、博士研究員としてロビンソン氏の研究室に参加しました。そして、細胞の形状を微調整する分子の検査に着手しました。ほとんどの薬品の検査とは、病気と関連する特定の生化学経路上の効果を調べるものであったのですが、スーセル氏は、「この検査は、全細胞の最終的な結果に基づいています。」と説明します。今回のケース(研究)では、哺乳動物細胞型に類似しているアメーバ細胞性粘菌が使われています。分子で細胞を処理した後、ロビンソン氏のチームは、2つ以上の核を有する普通ではみられない細胞を探しました。細胞性粘菌は、通常それらが2つの娘細胞に分割する過程にある場合にのみ、複数の核を有するため、『2つの核を有する場合、高い割合で細胞分裂の過程で、特に細胞骨格の力学が微調整された可能性があります』。

 

 

何千もの分子のスクリーニングの結果、チームが探していた影響を起こす分子を25個発見することができました。そして、さらなる研究により、そのうちの一つ、『4-HAPが、ミオシンIIという細胞骨格の構成要素に影響を与える』ことを明らかにしました。 そして別のジョンズホプキンス研究所(病理学の准教授であるロバート・アンダース氏のグループ)と共同で、『膵臓がん細胞におけるミオシンIIの量の変化は、がんが原発から他の部位に転移する、膵臓がんの進行に重要なステップであること』を明らかにしました。

研究チームは、実験室で培養した膵臓がん細胞に4-HAPを投与したところ、細胞骨格のミオシンに影響を与え、細胞を硬化することが判明しました。「我々は、浸潤するがん細胞が比較的柔らかい状態にあるということは、容易に体をすり抜けて、新しい部位へ転移することを助けていると考えています」とスーセル氏は述べています。「(例えて言うと)固い殻を持ったエビやカニより、身体の軟らかいタコの方が簡単に小さな穴を通り抜けられるというものです。」

 

 

チームは現在、マウスを使って4-HAPをテストしています。「この薬は黄疸の治療薬として、いくつかの国で既に使用されているので、それが膵臓がんに対して治療効果を示した場合、比較的迅速に市場に出ることが可能でしょう。もし、治療効果が起こらなかった場合でも、この研究で使われたスクリーニング手法は新薬の開発に大きな可能性を秘めています」と、ロビンソン氏は述べています。

ジョンズホプキンス大学医学部 Source:
New Cancer-Fighting Strategy Would Harden Cells to Prevent Metastasis
http://bit.ly/1yGx6aj

参考

 

細胞骨格 Biology http://blogs.yahoo.co.jp/yuyamichidori/9221028.html

 

細胞生物学用語集【か行】|一般社団 http://www.jscb.gr.jp/glossary/glossary.html?category=jk

 

 

 

 

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