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海外ニュース:免疫療法は膵がん患者を救う魔法の杖になるか

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海外ニュース:膵癌にFDA承認されたペンブロリズマブなどの免疫療法はゲームチェンジャーになるか

2017年7月14日

 

がんの遺伝子に関する研究を通して、科学者はがんの起源をよりよく理解することができるようになりました。膵臓、乳房または肺にがんが見つかったとき、がん細胞が増殖することを可能にする特定の分子変化に基づいたがん治療を見つけることが常に望まれてきましたが、それは長い間、空想科学小説のような話でした。しかし、2017年5月に、米国食品医薬品局(FDA)が、その長い歴史の中で初めて、どの小児がん、成人がんを治療するためにも使える ペンブロリズマブ(商品名:キートルーダ)という免疫療法薬を加速承認しました。それはがんの部位に関係なく、厳密にがん細胞の分子プロファイリングに基づいて承認された初めての医薬品となりました。

 

サイドストーリー:ジミーカーター元大統領とペンブロリズマブ
2015年5月、第39代米国大統領のジミーカーター氏は肝臓にみつかった小さな腫瘍の摘出手術を受けました。病理検査の結果は悪性黒色腫(メラノーマ)と呼ばれる皮膚がんの一種でした。MRI検査の結果、脳に数個の2㎜サイズの転移も見つかりました。メラノーマは、皮膚の色素(メラニン)を作る細胞(メラノサイト)がん化したもので、胸、腹、背中、爪など太陽光のあたるところだけでなく、太陽にあたらない足の裏や手のひらなど、さまざまな部位にできます。2015年当時、ステージ4のメラノーマは、治療が難しく、余命は数カ月と考えられていました。しかし、幸いなことに、前年の2014年9月に免疫治療薬ペンブロリズマブがメラノーマに承認されていました。また、脳転移もサイズが小さく放射線療法でコントロールできました。新薬ペンブロリズマブの効果は絶大で、カーター元大統領のステージ4メラノーマが完全寛解したことからこの新薬が米国で広く注目されるようになりました。ジミーカーター元大統領の家族は、がん家系としても知られており、父親、妹、弟を膵臓がんで、母親を乳がんで失くしています。

 

このペンブロリズマブという免疫療法薬は米国FDAにより、2017年5月にミスマッチ修復欠損(dMMR;Mismatch Repair Defect)と呼ばれる遺伝子の欠陥を持つ固形腫瘍への使用が承認されました。この遺伝子変異のある患者の腫瘍は、免疫療法に対して感受性が高いと言われています。この遺伝子欠陥は、大腸がん、子宮内膜がん、胃がん、大腸がんを有する患者において最も頻繁に見られますが、膀胱がん、甲状腺がん、膵臓がんなど、他のがん種にも存在します。「腫瘍にミスマッチ修復欠損を有する進行膵臓がん患者にとり、この免疫療法薬は『ゲームチェンジャー』になる可能性があります」とルイス・ディアズ博士は説明します。

 

注:「ゲームチェンジャー」とは - 物事の流れや優劣を根底から覆すような、新しい可能性を持つ製品(薬や医療機器)などのこと。

 

ディアズ博士は、ジョンズホプキンス大学医学部准教授時代にこのFDAによる臓器横断型の画期的な承認を促した重要な臨床試験の主任研究者でした。現在は、ニューヨークのメモリアルスローンケタリングがんセンターで固形がん部門を率いています。「膵臓がんは、致命的なシナリオですが、この新薬が承認された結果、特定の患者にとり、よりコントロールしやすいがんになる可能性がでてきました。それは信じられないことです」とディアズ博士は言います。 「その研究の一員であることは勿論エキサイティングですが、この治療の恩恵を受ける患者のことを考えると興奮をおさえることができません。」

 

■ミスマッチ修復とは何ですか?

 

免疫療法は、患者の免疫系ががん細胞を異物として認識し、破壊するために攻撃するという原則に基づいています。しかし、がん細胞は賢明であり、免疫系に対する独自の防御を確立しています。 1つの防御方法は、がん細胞の表面をタンパク質で覆うことです。それにより、がん細胞を免疫系に見えなくしています。 ペンブロリズマブはその外套をはがし、がん細胞を免疫系に見えるようにします。しかし、それはすべての患者でうまくいくわけではありません。何故、ある患者にはうまくいくのか。その何故という質問に対する回答は、偶然、臨床試験に参加した1人の大腸がん患者からみつかりました。その患者さんは、ペンブロリズマブに劇的に良好な反応をしめしました。「私たちは、この患者がなぜそんなに良好な反応を示したのかを知りたいと思っていました。正しい人に正しい質問をし、適切な検査をした後、この患者にはミスマッチ修復遺伝子の欠陥があることがわかりました」とディアス博士は述べました。非常に簡単に言えば、ミスマッチ修復の欠損は、DNAにエラーまたは突然変異があるときにそのDNAを修復できないことを意味します。

 

サイドストーリー:米国国立がん研究所エクセプショナル・レスポンダー・イニシアティブ(NCI Exceptional Responder Initiative)
1〜10%の患者が劇的に反応して高い効果をみせる薬でも米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ることができないことが過去にありました。そのような良好な反応を示した患者群をさらに研究することで、それが特定の遺伝子変異が原因で例外的な奏功に繋がっていることがわかる場合もあります。このイニシアチブは、全体としてはそれほど良好な結果がでていない薬でも一部の患者には有効という可能性もあることから、その薬をさらに研究することで効果予測マーカーの開発、あるいは生物学的な理解を向上させる可能性を調査します。

 

肺がんのようながん種では、主にタバコの煙に含まれる化学物質が原因で多くの突然変異(ハイパーミュテーションHypermutation)がおこります。メラノーマと日光暴露についても同様な関係がみられ、多くの突然変異が起こります。「本質的に遺伝子に突然変異が多いほど、突然変異が侵略者として認識される可能性が高くなります」とディアス博士は説明しています。したがって、肺がんやメラノーマでは、ペンブロリズマブのような免疫療法薬が奏功するかも知れません。しかし、他のがん種においては、がん細胞がミスマッチ修復欠損を有していない限り、多くの突然変異はみられません。「平均的ながん細胞には約 70個の変異が見られますが、一方、MMR欠損がん細胞には約 1,700個の遺伝子変異がみられることから、免疫系にとり巨大な攻撃の標的となります」とディアス博士は述べています。いくつかの研究論文では、11種類のがんにおいて、患者の約 5%がミスマッチ修復欠陥を持つことが示されています。「患者数は非常に大きいとは言えませんが、しかし潜在的に助けられる可能性のあるがん患者にとっては非常にメリットは高い」とディアス博士は述べています。ミスマッチ修復に欠陥をある遺伝子をもつ膵臓がん患者は全体の約 3%と言われてます。

 

■注目すべきデータ

 

サイエンスジャーナルに掲載されたペンブロリズマブとミスマッチ修復欠損遺伝子に関する臨床試験には、12種類のがんを代表する86人の患者が参加したと説明がありました。全ての患者はミスマッチ修復欠損検査が陽性でした。また、過去に少なくとも1度は抗がん剤治療を受け、その薬が効かなくなった経験のある方です。この臨床試験では、患者は2年にわたり、2週間に1度、ペンブロリズマブの静脈内注射を受けました。これらの患者の半数以上(46人)に客観的なレスポンスがみられ、腫瘍は縮小しました。レスポンスがみられた患者のうち、約18人は完全奏功(CR)を示しました。それはがんが消えたことを意味します。 86人中66人(77%)が部分的な奏功を示しました(PR)。それは少なくとも30%以上は腫瘍の直径が縮小したことを意味します。完全奏功とは、CTなどの画像診断では腫瘍がもはやみえないことを意味します。患者なかには、腫瘍の増大はなく、大きさはそのままの安定(SD)状態の患者も含まれています。治療開始後1年で86人中65人(76%)が生存し、86人中55人(64%)が2年生存しました。

「これらの患者のなかには、非常にがんが進行していた患者も含まれていましたので、観察されたような長期間のレスポンスが見られることは非常に稀です。誇張するつもりはありませんが、私たちはただただその結果に驚いています。」とディアズ博士は述べました。

 

■腫瘍の遺伝子を検査する

 

試験結果とミスマッチ修復欠損を有する腫瘍に対するFDAの承認を考慮し、ディアズ博士らは、膵臓がん患者および他のすべての患者が腫瘍の分子プロファイル検査をうけることを奨励しています。「みなさんに検査を受けるよう、強く勧めたい」とディアズ博士は言います。 「この治療は、進行膵臓がんのすべての患者に役立つわけではありませんが、一部の人には役立つかもしれません。膵臓がんと闘うための道具箱のなかに新たに加わったもう一つの道具なので活用する必要があります。治療の選択肢がなくなった人に、もうひとつのチャンスを与えてくれます。」

 

Source:Modified from Science, the Lustgarten Foundation

 

 

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