海外ニュース:膵臓がん遺伝子変異に関する手がかりを全国的な取り組みで発見

海外ニュース:膵臓がん遺伝子変異に関する手がかりを全国的な取り組みで発見

2017年8月14日

 

Andrew Aguirre MD PhD

DNAを構成する4つの塩基対チミン、シトシン、グアニン、アデニンの略記であるTCGAをチーム名に使ったThe Cancer Genome Atlasプロジェクトは、著名なCancer Cellジャーナルに膵臓がんに関する所見を発表した。

 

全国の主要研究機関の数十人の研究者から構成されているTCGAチームは、最も一般的な形態の膵臓のがんである膵腺がんに焦点を当てた研究の成果を発表した。このチームは、150症例の組織サンプルから遺伝子データを収集し、分析し、報告した。研究者らは以前から知られていた遺伝子変異を検証し、さらにいくつかの新しい変異も発見した。重要なのは、TCGAプロジェクトのような大規模な分析プロジェクトは、治療上標的とすることができる疾患の特定の異常または亜型をも明らかにすることができることである。

 

2013年にパンキャンのサミュエルストロムフェローシップ(Samuel Stroum Fellowship)を受賞し、論文の共同執筆者であるアンドリュー・アギレ(Andrew Aguirre)博士(写真)は、次のように述べている。「この巨大なチームによる研究はいくつかの答えをもたらしましたが、さらに多くの疑問と新しい仮説をも導き出しました。われわれの知見は、これまでになかった膵臓がんの分子生物学的なポートレートの改善をもたらし、疾患の小集団を対象とした臨床試験について考えることを可能にしました。」

 

論文のハイライト
1.膵臓がんの細胞性を考慮したマルチプラットフォーム研究(150症例)
2.KRAS野生型腫瘍における代替ドライバーとKRAS突然変異の異種性の特定
3.プロテオーム・サブタイプの特定と関連する予後の重要性と治療上の意義の同定
4.mRNAと非コードRNAの統合解析によるコンセンサス・サブタイプの示唆

 

論文の概要
著者らは、150症例を使い、膵腺がん(PDAC)の統合されたゲノム、トランスクリプトーム、およびプロテオミクスプロファイリング分析を行った。全エクソームのディープシーケンス配列決定は、KRAS、TP53、CDKN2A、SMAD4、RNF43、ARID1A、TGFβR2、GNAS、RREB1、およびPBRM1における反復性の体細胞突然変異を明らかにした。 KRAS野生型腫瘍は、GNAS、BRAF、CTNNB1および追加のRAS経路遺伝子を含む他の発がん性ドライバーの変化を有していた。腫瘍のサブセットに複数のKRAS突然変異があり、いくつかは二対立遺伝子突然変異があるエビデンスを示した。タンパク質プロファイリングは、低い上皮間葉移行および高いMTOR経路スコアを有する予後サブセットを同定した。非コードRNAと腫瘍特異的mRNAサブタイプとの関連もまた同定された。著者による統合マルチプラットフォーム解析は、膵腺がんの複雑な分子環境を明らかにし、プレシジョンメディシン※へのロードマップを提供した。

 

論文へのリンク

http://bit.ly/2uMJHPz

 

※腫瘍の分子特性を用いて治療オプションを指定することは、プレシジョンメディシン(ゲノム医療)として知られている。すべての膵臓がんは異なるため、パンキャンでは、患者に腫瘍の分子プロファイリング検査を受けることを強く勧めている。もし分子プロファイリング検査を受けることができない場合は、条件があう患者は参加することができるので、パンキャンの「あなたの腫瘍を知ろう(Know-Your-Tumor®)」というプレシジョン・メディシンのサービスについて調べることを奨励している。

 

TCGA研究者の大きな課題は、膵臓がんの周りにある悪名高い、密集した間質であった。非常に多くの種類の細胞が腫瘍を包囲し浸潤しているので、どの細胞ががん細胞で、どれががん細胞に隣接する細胞または支持細胞であるかを分類することは困難である。ダナファーバーがん研究所(Dana-Farber Cancer Institute)において、膵臓がん研究のために自らの研究室を立ち上げたアギレ博士は、「このプロジェクトの最も重要な目標は、さまざまな分子的手法を用いて腫瘍のがん細胞に関する最大限の情報を抽出することでした。我々の研究結果と方法論を公にし、分かち合うことで、この情報を用いて、がん細胞と間質要素の比に関わらず、膵臓がんの組織サンプルを深く分析できることを願っています。」と語った。アギレ博士に加えて、同論文の他の共同執筆者には、ジョンズ・ホプキンス大学のラルフ・ルーベン(Ralph Hruban)博士、プリンストン大学のベンジャミンラファエル(Benjamin Raphael)博士など著名な膵臓がんの研究者がいる。さらにノースカロライナ大学のジェン・ジェン・イェ(Jen Jen Yeh)博士、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のエリック・コリソン(Eric Collisson)博士、メイヨークリニックのグロリア・ピーターソン(Gloria Petersen)博士など、数多くのパンキャン諮問委員を経験した著名な研究者もこの研究の重要な貢献者である。

 

「このような巨大なプロジェクトは、一人の研究者や一つの研究機関が取り組むことはできません。」とパンキャンのチーフ・サイエンス・オフィサーであるリン・マトリシアン(Lynn Matrisian, PhD, MBA)博士は述べている。「米国国立癌研究所(NCI)がTCGAプロジェクトを主導してくれたこと、さらにこの論文を発表するために疲れを見せることなく長時間、献身的に働いた研究者の熱意を称賛します。また、たくさんの膵臓がんの生検組織を共有してくれた意欲ある患者の皆さんに感謝します。」「アギレ博士のような若手研究者が、この分野の巨人の中でこのようなリーダーシップを発揮してくれることは特に嬉しく思います。」とマトリシアン博士は語った。また、「パンキャンのKnowYourTumorでは登録者が1000症例を超えたが、このTCGAチームの研究では、500症例と少数ではあるが、ゲノムの解析だけではなく、包括的にゲノムからトランスクリプトーム、およびプロテオミクスのプロファイリング分析など、ディープに膵腺がんを分析したことが特徴である。それにより、分子標的薬、免疫療法薬などの新たなターゲットの発見に繋がることが期待される」とマトリシアン博士は言う。

 

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