『研究が進む家族性膵臓がん:新たな治療法の開発につながる発見』

2017年10月12日


癌遺伝子検査の生命倫理的および行動的影響を研究しているグロリア・ピーターソン博士は、以下の膵臓がんの遺伝子研究からの結果を語っている。 


個別化リスク:
遺伝性膵臓がんは、いくつかの異なる遺伝子において「生殖系列」突然変異として知られる突然変異によって引き起こされ得る。これらの突然変異は、卵子または精子細胞で起こり、再生中に子孫の体内のすべての細胞に伝達される。今日、特定の遺伝性遺伝子に起因する膵臓がんの発病リスクのある人は、近い将来、そのリスクについて詳細な説明を受けることができるようになる。遺伝性のがん発症リスクを子孫に与えることができる遺伝子には、BRCA1、BRCA2、PALB2、およびCDKN2Aが知られている。。いくつかの遺伝性大腸がん遺伝子である、特にMLH1、MSH2、およびMSH6もまた、膵臓がんの発病リスクを高めることが研究によって示されている。


1.    突然変異によるリスクの変化:共通する遺伝的変異は、膵臓がんのリスクを1〜2%増加させるだけだが、よりまれな変異は5〜30%の生涯リスクをもたらす可能性がある。


2.    その他の要因リスクへの影響:
膵臓癌患者の約10%がBRCA2、ATM、PALB2などの遺伝子にまれな変異を持っていることが研究によって示されている。 膵がんの残りの症例は、リスクの低い遺伝子、生活習慣、または環境上の原因と関連している可能性がある


3.    家族性膵臓癌は、すべてのシナリオにおいて1遺伝子には合致しない:
複数の家族に発生しているのが、同じ遺伝子の変異だけとは限らないからだ。家族性膵臓がんの家族は、BRCA2のような1つの遺伝子に変異をもつ可能性があることが示されているが、別の家族はPALB2突然変異を有するかもしれない。


4.    腫瘍形成と増殖拡大、転移に関する新しい情報:同じ患者でも膵臓腫瘍細胞が大きく異なる可能性があるため(つまり、それぞれの人の腫瘍は、異なるがん細胞から構成されているため)、腫瘍形成と拡大、転移を引き起こす多くの異なる遺伝的変異が存在する可能性がある。


こうした科学者の推測の一方で、遺伝学的研究は、原発腫瘍および転移を駆動するのに同じ突然変異が関与していることを示し、分子標的療法が転移性がんを治療するための道を開く可能性を示唆している。


■ラボからクリニックへ研究成果を反映するための活動:
「家族性の膵臓がんを引き起こす可能性のある遺伝子の理解を深めることは、膵臓がんのリスクを定量化するだけでなく、他のがんのリスクを定量化するのにも役立ちます」と、 膵臓がんに影響を及ぼす遺伝的および生物学的因子に焦点を当てた米国メイヨクリニック(MayoClinic)の膵臓SPOREイニシアチブの主任研究員でもあるピーターソン博士(Dr. Petersen)は述べている。 「研究のポイントは、研究室の所見を臨床現場に移すことで、早期にがんを発見するだけでなく、より個別化された治療法を提供することで人命を救うことができることである。(研究室から、実際に患者さんを診ている臨床の現場と情報を共有することでより多くの人を救える)」


確かに、個別化された治療は有望です。 既に、経験的に医師は、ある種の医薬品が、特定の突然変異を有する腫瘍により良好に奏功する(効果がある)ことを知っている。 例えば、エルロチニブと呼ばれる分子標的薬は、腫瘍がEGFR遺伝子に変異を有する患者においてより良好に機能する可能性がある。 

            
しかし、DNAは必ずしも最終目的ではない。 「突然変異を有する多くの人々は膵臓がんを発症しないかもしれないが、膵臓がんの家族歴は確実に一貫した危険因子であり、第一度近親者(親、兄弟、子供)に対するリスクは約2倍になる」と、ケン・ザレ博士(Ken Zaret)Ph.D.、 Penn Institute of Regenerative Medicineは語る。ザレ博士は、最も早く、最も治療可能な段階で膵臓がんを発見するために2つのタンパク質マーカーを使用する新しい血液検査を開発した。この血液検査はまだ研究段階ですが、感度が87%で、ステージIまたはIIの膵がん患者を正確に特定できる頻度が高いことを示している。 また、98%の特異度があり、膵臓がんのない人を正確に排除できる能力を持つことを意味している。

 

■積極的な遺伝子研究の先にあるもの
「リスクが懸念される場合は、リスクを軽減するための措置があります。 タバコ使用者は喫煙者と比べて膵臓がんを発症する可能性が約3倍高いため、リスク軽減策として、喫煙をやめることが大切です。」とピーターソン博士は語る。「しかし、乳がんや膵臓がんの家族歴がある場合は、BRCA1、BRCA2、およびPALB2遺伝子の検査があります。 黒色腫および膵臓がんの家族歴がある場合、p16またはCDKN2A遺伝子についての検査が利用可能です。 一部の人々は、家族性膵臓がんの研究登録簿に参加することを選ぶかも知れません。」


「遺伝子検査の利点と潜在的なリスクについて助言できるがん遺伝カウンセラーと話すことが大切です」と、癌遺伝子検査の生命倫理的および行動的影響を研究しているピーターソン博士は説明する。 遺伝カウンセラーは、家族歴を調べ、遺伝性の要素があるかどうかを見て、膵臓がんの生涯罹患リスクを算出することができる。


ピーターソン博士は、膵臓がんの将来については、非常に有望であると話す。 「膵臓癌はひどい病気ですが、我々は、個人の膵臓がん発症リスクについて、より多くの人に知らせることができるようになると信じています。」 「私たちがしている研究はすべて、膵臓がんの実態解明につながる知識の本体に追加されているのです。(知識がある一定の量を超えると治癒に繋がらるブレークスルーの可能性が高まると信じられている)。そして、それが私たちがこの研究を行う理由なのです」。

 

編集注:

参照:日本膵臓学会 2016年度版膵癌診療ガイドライン

■家族性膵臓がんの検査について
家族性膵臓がんのスクリーニングは、最年少の患者より10歳若い年齢から始めることが一般的に推奨されています。第一度近親者(親、兄弟姉妹、子供)に二人以上の発症があるご家族は、普通の方に比較して、6.8倍のリスクと言われています。また、50歳前で膵臓がんになられた若年性発症があるご家族のリスクはより高くなる(9.3倍)ので要注意です。

 

非常に高いリスクの症候群(遺伝性非ポリポージス大腸癌(Lynch症候群)、Peutz-Jeghers症候群,家族性異型多発母斑黒色腫症候群,遺伝性乳癌卵巣癌症候群など)がみられる患者がいるご家族については、より若い年齢でサベーランスを開始する必要があると言われています。

 

サベーランスの間隔はベースラインの検査結果で判明した発症リスクにも左右されますが、正常なベースラインの所見を有する家族性膵臓がんのご家族は1〜2年ごとの検査が望ましいとされています。ご家族に膵臓がん患者が複数みられた、または50歳前に膵臓がんになられた若年性発症があり、ご自身も発症リスクが高いと思われる方は、膵臓がんの専門医、または遺伝カウンセラーにご相談ください。

 

Pancreatic Cancer Risk Factors

参照:日本膵臓学会 2016年度版膵癌診療ガイドライン

 

Reference: Let's Win: Promising Science

(Source:Survivor Story-Let's Win Lustgarten Foundation)

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<免責事項>この医療記事は、がん研究の最新ニュースを紹介する目的で書かれています。特定の治療法や薬の使用を推奨するものではありません。ご自身の病状については、担当医とよく話し合ってください。このウェブサイトの情報を利用して生じた結果についてPanCANJapanは一切責任を負うことができませんのでご了承ください。

 

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