AACR:膵臓がんの遺伝子変異にマッチした治療の臨床結果

2018年6月28日

Allison Rosenzweig, PhD
-
米国パンキャン本部(PanCAN)は、膵臓がんの治療選択を患者の腫瘍の遺伝子変異を基にすることで患者の予後・アウトカム改善に繋がることを示しました。

本日、米国癌研究学(AACR)の会誌であるClinical Cancer Researchにおいて、米国PanCAN本部の『あなたの腫瘍を知ろう(Know YourTumor)』精密医療サービスを受け、遺伝子変異にマッチした分子標的薬を投与された患者の有望な試験結果が発表されました。精密医療(がんゲノム医療)では、患者の腫瘍の特定生物学的特徴に基づいて患者の治療を選択し、決定することができます。患者の腫瘍の特性・遺伝子変異に合わせた分子標的薬で治療を受けた患者の予後・アウトカムは標準療法と比較して改善されたと発表されました。

Know Your Tumor精密医療サービスを通して、患者とその医療チームは、腫瘍特有の遺伝的およびタンパク質の変化に関する詳細なレポートを受け取ります。 PanCANはすべての膵臓癌患者に対して分子プロファイリング(遺伝子検査)を強く推奨しており、これらの新たに発表された臨床試験結果はその立場を強化するものです。

PanCANの最高科学責任者Lynn Matrisian博士は、Know Your Tumorを率いてきた、この論文の執筆者です。 「私たちは、このサービスに参加した患者の約半数に『アクショナブル』な遺伝子変異がみられたことを嬉しく思います。これは、特定の治療薬を使うと腫瘍に影響を与える可能性のある突然変異または他の分子変化が存在することを意味します。」

膵臓がん全体として、患者の腫瘍の約27パーセントに少なくとも1つの『非常にアクショナブル』な遺伝子変異が見られました。この場合、少なくとも1つの癌種においてその分子的特徴をブロックするのに特に有効な医薬品を使った直接的な科学的および臨床的証拠があります。

(編集注:腫瘍の遺伝子を解析し、変異の特徴がわかることで、それにマッチした、より奏功する治療薬を選択できる。その結果、改善されたアウトカムと少ない副作用が得られる可能性がある。)         

「非常にアクショナブルな突然変異を有し、そして患者のKnow Your Tumor報告書に示された遺伝子変異にマッチした治療を受けた患者は、そうでない患者と比較して、無増悪生存期間が有意に延長されました。」と Matrisian博士は述べています。

「無増悪生存期間とは、治療を開始してから患者さんの病気が悪化するまでの期間です。無増悪生存期間を延長することは、患者が気分を良くし、家族や友人と過ごす時間を楽しみ、次の治療計画に備える力を取り戻すための重要な時間となります。」

PanCANのKnow Your Tumorサービスを利用し、研究に参加することで恩恵を受けた患者の一例が、ロサンゼルス地域に住んでいる整形外科医、アクシャイ・メータ氏(Akshay Mehta, MD)です。彼は、35歳のときに家族歴のない健康な若者として、局所進行性膵臓癌という衝撃的な診断を受けました。

Mehta氏の最初の積極的な化学療法レジメンでは非常に重篤な副作用が発生し、しかも残念ながら腫瘍は縮小しませんでした。それから、彼の腫瘍内科医は、PanCANで行われているKnow Your Tumorサービスを利用して、遺伝子検査をするよう勧めてくれました。遺伝子検査を受けると、その報告書には予想外の発見が示されていました。 彼の腫瘍は、ALK融合と呼ばれる、非常にまれな遺伝子変異に対して陽性でした。

「私達は他の癌種に対して承認されている、ALKの活動を効果的に阻止する薬が入手可能であることをとても幸運に思いました」とMehta氏は言いました。Mehta氏の腫瘍はALK阻害剤に対して劇的な反応を示したため、その後、膵頭十二指腸切除術を受けることができました。これはALK融合遺伝子陽性の患者が受ける医薬品のお陰です。それを受ける前にはなかった選択肢です。「私たちは、PanCANのKnow Your Tumorサービスを通してALK融合遺伝子を発見できたことに本当に感謝しています。それが理由で私は外科手術を受けることができ、そして今日ここにいることができるからだと思うからです」とMehta氏は言いました。

高度にアクショナブルな遺伝子変異の有る患者が、その腫瘍プロファイルにマッチした治療を受けた場合、無増悪生存期間(PFS)は 4.1ヵ月でしたが、それにマッチした治療を受けていない場合の無憎悪生存期間はその半分の 2ヵ月でした。

「ゲノム医療は膵臓癌患者に利益をもたらすことはできないという考えが長年ありました」とMatrisian博士は述べました。 「しかし、このKnow Your Tumorサービスは、膵臓癌患者の治療の変化の流れを実証しており、分子プロファイリングによる、腫瘍の遺伝子変異をもとにした治療は膵臓癌治療に不可欠であることを示しています。」

Know Your Tumorサービスを通して分析された640人は、地域のコミュニティセンターと大勢の患者が集まる大規模ながんセンターなどの両方を含む、アメリカ全土の287の異なる医療施設で治療された患者です。そして、これらの医療施設はアメリカの44州にまたがっています。「Know Your Tumorサービスは、地域のメジャーながんセンターで治療を受けているかどうかにかかわらず、患者の生活を改善し生存期間を潜在的に延ばすことができる強力な情報にアクセスすることができます」とMatrisian博士は述べまています。「Mehta氏のような体験を聞くことは、このような分子プロファイリングが患者の生活に大きな影響を与えること、そのために必要な情報とは何かを思い出させるのに重要です。」

 

■編集注:このゲノム医療を日本の膵臓がん患者に届けるためには、皆様のご支援が不可欠です。アメリカのようにまず膵癌患者全員が診断時にゲノム検査を医療保険によって受けられるようになること、また、膵臓がん患者がゲノム医療を受けられる施設が全国に準備されることが必要です。また、ゲノム医療が始まると様々な課題がでてきます。このような膵臓がんのゲノム医療のあるべき姿を理解してもらうためにアメリカから講師を招聘する予定です。

このままでは、ゲノム医療が今年の4月にスタートしても、ゲノム検査が受けられない、マッチした医薬品が使えない、そして「ゲノム難民」になってしまうということが危惧されます。膵臓がん患者が「ゲノム難民」にならないためには、さまざまな準備が必要です。それを実現するためのパンキャンの活動を支援してください。

ご寄付はこちらから:https://www.pancan.jp/index.php?option=com_content&view=article&id=380&Itemid=717

また、私たちのFacebookも見て、最新の治療法、ゲノム医療などの情報を入手してください。 https://www.facebook.com/pancanjapan/