ASCOーGI:切除可能な膵臓癌における術前化学療法と手術先行の比較

2019年1月18日

キーポイント

  • 全生存期間の中央値は、NAC-GS治療群で36.7ヶ月、手術先行群で26.6ヶ月でした。
  • 切除率、R0切除率、および外科的罹患率は2つのグループで同等であった - さらに、どちらのグループも周術期死亡率を有していなかった。
  • NAC-GSグループで最も一般的に報告されているグレード3/4の有害事象は白血球減少症および好中球減少症でした。

東北大学の海野教授らによる2019年のGI-ASCO消化器癌シンポジウムで発表された第II / III相臨床試験は、切除可能な膵管腺癌の組織学的確認を有する患者に対して、術前化学療法(ゲムシタビンとS-1併用)先行と手術先行の群を比較しました。

 

■方法

患者は、1および8日目に1 g / m 2のゲムシタビンおよび1〜14日目に1日2回40 mg / m 2の経口S-1を用いた2サイクルの術前化学療法による治療群、または手術先行の群に無作為に割り付けられました。術後10週間以内に根治的切除と完全回復を示した患者に対して、両群ともに術後補助療法としてS-1を6ヶ月間投与しました。

第III相試験では、主要評価項目は全生存期間(OS)でした。副次的評価項目には、有害事象、切除率、無再発生存期間(PFS)、残存腫瘍状態、リンパ節転移、および腫瘍マーカー動態が含まれました。

3年間で、364人の患者が57のセンターにおいて登録され、そのうち182人が術前化学療法を受けるために無作為に割り当てられ、182人が手術を先行して受けるために無作為に割り当てられました。合計362人の患者が治療意図分析に含まれました。

 

■結果

全生存期間中央値は、術前化学療法群で36.7ヶ月、手術先行群で26.6ヶ月でした(ハザード比= 0.72、95%信頼区間0.55〜0.94、P = 0.015 [層別ログランク検定])。

術前化学療法グループで最も一般的に報告されているグレード3/4の有害事象は、白血球減少症および好中球減少症でした(72.8%)。切除率、R0切除率、および外科的罹患率は2つのグループで同等でした。さらに、どちらのグループも周術期死亡率はありませんでした。

 

■結論

研究者らは、「この第III相試験は[ゲムシタビンとS-1による術前化学療法]群が手術先行群よりも有意な延命効果を示しました。したがって、結果から、術前化学療法は切除可能な膵腺癌患者にとって新たな基準となり得ることが示されました。」と説明しました。

 

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東北大学病院のプレスリリース:切除可能膵がんの新たな標準治療として術前化学療法の有効性を証明–   がんのなかでも最も治療成績が不良な膵がんの治療成績が向上 –                 Source: https://bit.ly/2I1f8N0

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※編集注1:Andrew X. Zhu, MD, PhD, of the Massachusetts General Hospital Cancer Centerは、この試験で使われたS-1が欧米では使われていないことから、日本、アジア以外の国におけるGS療法の普及については懐疑的なコメントをしています。しかし、「今回の臨床試験の結果により、日本では膵腺癌の術前にGS療法が使われだろう」とZhu博士は述べています。日本では今回GS療法が試験されましたが、欧米で進んでいる術前補助療法の臨床試験でみられるように、化学放射線療法、mFOLFIRINOX、Gem+nab-Paclitaxel併用療法などの治療が日本でも術前化学療法の選択肢として将来登場するかも知れません。

※編集注2:ゲノム医療が進むことで、融合遺伝子などが発見される患者の治療成績は大きく変わる可能性があります。アメリカ癌学会(AACR)では、悪性度の高い癌種は特には初期段階から全身病として扱い、術前化学療法を先行することが必要と言われてきました。膵癌でも早期の段階から画像診断ではわからない微小転移がある可能性があることから化学療法を先行するメリットが指摘されてきましたが、長年、米国でも日本でも手術先行(Surgery First)が唯一の治療選択肢でした。これからは化学療法先行(Chemotherapy First)が膵癌の標準療法になるかも知れません。早期に発見された膵癌患者でも今回の試験でみられるように術後の治療成績は全がんの5年生存率である75%には届きません。膵癌には、より奏功する化学療法の開発が求められています。

 

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※この記事の内容は、米国臨床腫瘍学会(ASCO®)によって審査されたものではなく、必ずしもASCO®のアイデアや意見を反映したものではありません。