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サバイバーストーリー:スティーブン・マーリン氏(ステージ3)

~8年サバイバーのゲノム医療と臨床試験の成功体験~

著者:ジェニファー・ケネディ—

2020年6月10日

米国の膵臓がん患者は、米PanCAN本部のセミナーやコミュニティ・イベントで膵臓がんの症状と危険因子について学びことができます。2012年に膵臓がんと診断され、治療を続けてきたスティーブン・マーリン氏は、先輩患者として膵臓がんについての正しい認識を広め、診断された人々に希望を与えるボランティア活動に専念しています。8年膵臓がんサバイバーのスティーブン・マーリン氏は、積極的な治療計画のおかげで今日彼の治療がうまくいっていると信じています。

スティーブン氏は、2012年に、ステージIIIの局所進行膵腺房細胞癌(acinar cell carcinoma of pancreatic body .非常にまれで、非常に浸潤性の高い膵がんの一種)と診断されました。彼は手術を受けましたが、ステージIIIの膵臓がんの人には一般的ではありません。しかし、術後化学療法のゲムシタビン(商品名ジェムザール)は効果がみられず、癌は拡大してしまいました。それで、スティーブン氏は、拡大し始めた腫瘍を縮小させるためにFOLFIRINOX療法に切り替えました。その間、彼は遺伝学者にも診てもらいました。そこで受けた生殖細胞系遺伝子検査により、彼はBRCA2遺伝子変異が陽性であることを発見しました。

BRCA変異を有する膵臓がん患者は、2種類の治療に特によく反応する可能性があります。プラチナ含有化学療法(オキサリプラチン、シスプラチン、FOLFIRINOXなど)とPARP阻害剤(オラパリブなどの分子標的療法)です。

(編集注:2019年12月30日米国FDAはBRCA遺伝子変異陽性の転移性膵臓がん患者にオラパリブ(商品名リンパルザ)を承認。日本では2021年に承認される予定)

しかし、スティーブン氏が治療されていた当時、それは広く知られていませんでした。ゲノム医療(患者または腫瘍の生物学に基づく治療)、がん遺伝子パネル検査、生殖細胞系遺伝子検査(Germline Test)は、当時の膵臓がんではあまり使用されていませんでした。Germlien Testは、家族性膵癌の疑いのある方を中心に行われていました。しかし、その後、BRCA遺伝子変異陽性の割合が、家族歴のある方とない方でほぼ同等であったことから、2019年4月のNCCNガイドライン改訂により、全膵臓がん患者に推奨されるようになりました。

当時、そのようなことが知られていなかったにもかかわらず、遺伝学者はスティーブン氏の治療アプローチの可能性を知っており、彼に生殖細胞系遺伝子検査を受けさせました。その結果、PARP阻害剤を使用する臨床試験を探すように勧めてくれました。スティーブン氏は米国PanCAN本部のPALS患者サービスに連絡し適切な臨床試験を探してもらいました。その結果、彼は自分のニーズのすべてを満たす治療法を見つけることができました。

スティーブン氏は彼の臨床腫瘍医と治験を実施している研究者に相談し、利益が得られなくなるまでFOLFIRINOX療法を継続することにしました。FOLFIRINOXは、BRCA遺伝子変異陽性患者に有益なプラチナ系製剤のオキサリプラチンを含んでいます。その後、2014年10月にPARP阻害剤オラパリブの臨床試験に切り替えました。スティーブン氏はその治験の最初の患者でした。彼はまた、完全な反応を示した最初の患者でもありました。「FOLFIRINOXは私の膵臓がんを寛解させた」とスティーブン氏は語ります。 「PARP阻害剤による維持療法は、再発を防ぎ私を寛解した状態に留めてくれました。」

すべての膵臓腫瘍は異なります。治療が腫瘍生物学および/または遺伝子構成と一致する患者は、アウトカム/予後が改善される可能性があります。 PanCANは、パネル検査(分子プロファイリング)と生殖細胞系遺伝子検査により、最良の治療オプションを選択することを強くお勧めします。

(編集注:米国NCCNガイドラインでは、膵癌患者の全員に診断時に生殖細胞系遺伝子検査が推奨されています。また、転移性の膵癌患者には、診断時にがん遺伝子パネル検査を受けることが推奨されています。日本でもパネル検査が保険償還されましたが、米国のように診断時にパネル検査が受けられません。診断時に受けられるように日本の診療ガイドラインを改訂することが必要と厚労省は言いますので、PanCANJapanではその実現に向けた政策提言活動を進めています。参照 www.nad-suizou.org、www.pancan.jp)

今日、米国の膵臓がん患者が腫瘍の生物学または遺伝子構成に基づいてゲノム医療を受けることができるようになったのは、2014年に米PanCAN本部がスタートした「自分のがんを知ろう(Know YourTumor®)」臨床研究を通じて行われたパネル検査とその後の治療の結果によるものです。PARP阻害剤オラパリブの臨床試験に参加したスティーブン氏のような先駆者のおかげで、BRCA変異を有する特定の膵臓がん患者に対してオラパリブはFDAにより2019年12月30日に承認されました。
そして、スティーブン氏は膵臓がんについて広く社会に知らせる啓発活動や、膵臓がんと診断された人々を支援するボランティア活動に専念しています。

「私たちには皆、目的があります」と彼は言った。 「私は自分の診断を得て、これでいいのですと言うこともできたかもしれませんが、私はそうはしませんでした。」

彼が特に情熱を傾けている分野は患者のためのアドボカシー(政策提言)活動です。過去3年間、彼は毎年米国の首都ワシントンD.C.を訪れ、国会議員と面会し、膵臓がん全国ナショナルアドボカシーデーに参加し、このがんに対する連邦政府の研究資金を増やすよう働きかけています。

(編集注:膵臓がんを治るがんにするためには、がん研究を支援することが大切です。米国PanCAN本部では、ナショナルアドボカシーデー活動を通じて、過去20年で膵臓がんの研究予算を10倍に増やし、現在では毎年170億円を超える額となりました。日本人に多く、アメリカ人には少ない膵臓がんは ―日本人の膵臓がん粗罹患率は米国の倍であるにも関わらず、日本の膵臓がん研究予算は一桁台です―、日本人を対象とした日本でのがん研究予算を増やすことが急務です。PanCANJapanでは、日本においてナショナルアドボカシーデー活動をスタートし、日本の膵臓がん研究者を支援し、日本人のための治療法開発の支援を進めています。 HP参照)

今年の膵臓がん全国ナショナルアドボカシーデーイベントはコロナの影響もあり、1週間のバーチャルアクティビティ(6月15〜19日)として開催されます。スティーブン氏は、膵臓がんと診断された人たちのために、今も将来も声を上げ続けます。

PanCANアドボカシーデーにスティーブン氏は参加しました。膵臓がん研究への資金提供の重要性を国会に示すために、患者さん、ご家族、ご遺族、医療関係者の皆さまにはぜひ、迅速で簡単な行動をとっていただきたいと彼は訴えます。そして、6月15日に開催された1時間のバーチャルキックオフイベントへの登録を呼びかけました。膵臓がんナショナルアドボカシーデーの支持者である、特別ゲストのシェルドン・ホワイトハウス上院議員(D-RI)と癌研究者のアニバン・マイトラ先生が参加されました。

米PanCAN本部PatientCentral(英語)に連絡することにより、世界の臨床試験やゲノム医療など、膵臓がんの治療について知らべてもらうことができます。また、疾患に関連するその他の英語版情報についても米本のPatientCentralに連絡してください。日本語の臨床情報に関しては、日本支部のホームページ(www.pancan.jp)に掲載されている情報を参照ください。

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注意事項:このストーリーで言及されている治療法は、臨床試験を含め、すべての患者に適切できるとは限りません。医師は、がんの病期と種類、患者の全体的な健康状態など、多くのことを考慮に入れて治療の選択肢を決定していますので、ゲノム医療を含め、ご自身の治療の選択肢については担当医にご相談ください。

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