AACR News Liquid Biopsies

AACRニュース:リキッドバイオプシー(血液生検)は、臨床試験参加を容易にする

ある研究によると、消化管腫瘍変異の血液生検による検査は、固形組織を生検した検査に必要な時間の3分の1の時間で結果が得られました。また、血液生検の検査を受けた患者は、臨床試験に参加する可能性が高かいことがわかりました。

著者 エマ・ヤシンスキー

2020年11月6日

研究者たちは、がんの新しい個別化された治療法(プレシジョンメディシン)を開発し続けています。これらの治療法は、特定の分子的特徴を持つ腫瘍を標的にすることが多く、患者とその治療法が最も効果的である組み合わせにマッチさせるには、ゲノム検査が必要です。迅速でアクセス可能なゲノム検査は、これらの標的治療の臨床試験と患者を一致させるために不可欠です。希少ながん遺伝子突然変異に対する効果的な治療薬の試験を実施するために必要な十分な数の患者を特定するためには、数千人をスクリーニングする必要があるかもしれません。一部の患者は、自分のがんに関連する遺伝子変異があることを知らないため、試験を見逃す可能性があります。

2020年10月5日にネイチャーメディシン誌に発表された研究によると、リキッドバイオプシー(血液中に見られるがん細胞またはがん細胞のDNA断片を分析する検査の一種)は、組織生検よりも迅速に結果を返すことができます。さらに、リキッドバイオプシー検査を使用して患者をスクリーニングすると、臨床試験への参加登録が増える可能性があり、試験に登録された患者は、生検の種類に関係なく同様のアウトカムを示します。

腫瘍生検の標準的な方法は、腫瘍から組織を採取し、そのDNAを配列決定することです。 「誰もが組織ベースのジェノタイピングを知っています。生検をスケジュールし、組織を採取する必要があります。組織は次世代シーケンシングに適している必要があります」と、研究に関与しなかったフロリダ州タンパ市モフィットがんセンターの消化器内科腫瘍医である豪謝博士(HaoXie)は述べています。 「しかし、プロセス全体には約1か月かかります。その間、患者は臨床試験には参加しないと決めてしまうかもしれません。」と彼は言います。

千葉県柏市にある国立がん研究センター東病院の消化器腫瘍学研究者である中村能章(なかむらよしあき)博士等は、GI-SCREEN(ジーアイスクリーン)と呼ばれる研究の一環として、消化器がんのバイオマーカーを特定して理解し、患者を臨床試験に導くために、進行性消化器がん患者の腫瘍組織を長年にわたって検査してきました。

「2015年から組織ベースのスクリーニング研究であるGI-SCREEN(ジーアイスクリーン)を実施してきましたが、組織のジェノタイピングの限界、ターンアラウンドタイムが長く、組織サンプルが採取できないことがあることもよくわかりました」と中村博士は言います。

中村博士と彼のチームは、もっと効率的な方法があるのではないかと考えました。 2018年に、研究者等は、GI-SCREEN試験と同様の進行性消化器がんの患者を対象とした GOZILA(ゴジラ)と呼ばれる2番目の研究を開始しました。しかし、このGOZILA試験では、研究者らは固形がんの組織生検の代わりにリキッドバイオプシー検査(液体生検)を使用しました。 Guardant360(ガーダント360)と呼ばれる血液ベースの生検では、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)、または血流中に見つかった腫瘍DNAの断片を分析します。 Guardant360は、クリニックで固形腫瘍のゲノムプロファイリング用に市販されています。

編集注:Gardant360 CDxは、米国FDAに最初に承認されたリキッドバイオプシー検査となりました。

研究者らは、組織生検を受けた5,621人の患者とリキッドバイオプシーを受けた1,687人の患者のデータに基づいて、2つの試験の患者間で生検の速度、臨床試験の登録率、および臨床試験の結果を比較しました。リキッドバイオプシーを使用すると、サンプルを取得して結果が届くまでにかかる時間が33日から11日に短縮されました。一方、リキッドバイオプシーを受けた患者の9.5%が臨床試験に登録されたのに対し、組織生検を受けた患者の方は、わずか4.1%でした。治療に反応して癌が縮小した患者の割合(RR)は、癌が進行するまでの時間(PFS)と同様に、両方のグループで類似していました。

 

nature medicine gi screen vs gozila screen

Source: Nature Medicine,  Figure2 : Comparison results of GI-SCREEN-Japan (tumor tissue biopsy) and GOZILA Study (liquid biopsy)

DOI: 10.1038/s41591-020-1063-5   October 5 ,2020

 

「これは私のような人々が待ち望んでいた研究です」とモフィットがんセンター消化器内科腫瘍医の謝博士は言います。 「この研究は非常にエキサイティングであり、私たちの臨床を変える可能性があります。」

リキッドバイオプシーのもう1つの潜在的な利点は、組織生検は特定の時点での腫瘍の特徴のみを表しますが、リキッドバイオプシーは侵襲性が低く、必要に応じて治療中に繰り返すことができます。 「組織生検は、ある時点での腫瘍に焦点を合わせます」と、研究に関与しなかったモフィットがんセンターの病理医であるクン・ジャン博士は言います。 「腫瘍は変化し続けています。 …この液体生検は、実際に腫瘍プロファイルの最新の写真を提供することができます。」

「この研究は、患者を治療に導くための中央スクリーニングの価値を示す素晴らしい協調的取り組みです」と、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター(ヒューストン)の胃腸内科腫瘍医であり、この研究に関与していなかったスコットコペッツ博士は述べています。しかし、「このよく行われた研究でも、スクリーニングに基づいて試験に登録することができた患者の割合は10%未満でした」と彼は付け加え、「がん遺伝子パネル検査スクリーニングのプロミスは誇張すべきではない」と強調しました。

 

編集注1:アクショナブルな遺伝子変異はスクリーニングに参加した患者の50%以上に見つかっています。しかし、米国のようにがん遺伝子変異に対応する分子標的薬が、個々のがん種に承認されていなくても、適応外薬として使用することができますし、また、その医薬品を使用した臨床試験(治験)があれば患者は参加することを考慮できます。しかし、日本では適応外薬は使用できないこと、また、マッチした医薬品を使用した試験の数も少ないために、折角、パネル検査を受けてマッチした治療薬が見つかっても、現段階で治療が受けられる患者の割合は1割程度と言われています。この割合を増やすために、適応外薬の使用に関して患者申出療養制度が整備されています(編集注2参照)

 

編集注2:がん遺伝子パネル検査後の新たな治療選択肢:適応外使用を患者申出療養制度のもと多施設共同研究として実施

https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/1002_2/index.html

 

編集注3:エマヤシンスキー氏は、フロリダを拠点とするフリーランスの科学および医療ジャーナリストです。

 

 

記事ここまで。
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米国パンキャン本部の代表ジュリーフレッシュマン氏、NPO法人パンキャンジャパンの眞島喜幸氏は共に、米国癌学会AACR Cancer TODAYの編集諮問委員です。この記事は、編集諮問委員の提案により執筆されました。

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米国パンキャン本部では、Know Your Tumorプロジェクトを通して、パネル検査が受けられない膵臓がん患者に無償でF1CDxなどの検査を提供してきました。いままでに2000症例以上の検体を集め、その遺伝子解析を行い、膵臓がんに多くみられる遺伝子変異を調べてきました。詳しくはASCOレポートを参照ください。https://bit.ly/2CH6jmJ

 

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