2013年10月27日(日)すい臓がん啓発パープルリボンセミナー2013 in 東京

    2013年10月27日(日) 東京医科大学病院 本館(6F)臨床講堂 午後1時 (アクセス:地図) 膵臓がん市民公開講座:膵臓がん治療の最前線 - 膵臓がんの最先端医療をひもとく- すい臓膵臓がん治療の進歩には目覚しいものがあります。 新しい診療ガイドラインと家族性膵がん、膵のう胞などのリスク因子と経過観察、外科手術とBR術前化学放射線療法、再発予防と予後改善のための術後化学療法、FOLFIRINOXなどに代表される多剤併用療法、腹水、腹膜播種の治療、疼痛医療と緩和ケア、がんとリハビリなど、最新の膵がん医療情報を提供いたします。  膵がんと告知された方の予後を改善するには、正しい情報と患者家族の情熱です。 パンキャンジャパンが膵がん患者さんとそのご家族に自信を持ってプレゼントする最前線セミナーです。お席に限りがありますので、早目にお申し込み下さい。定員になり次第、締め切らせていただきます。 必ずご参加いただきたい有益な情報が満載です。 ※定員200名。お席に限りがあります。事前登録のうえご参加ください。     ■プログラム:膵臓がん啓発パープルリボンセミナー(膵臓がん市民公開講座:膵臓がん治療の最前線) 12:30 開場   13:00-13:10 オープニング 開会あいさつ東京女子医科大学 東京女子医科大学病院長 消化器内科教授 白鳥 敬子 13:10-13:30 基調講演(1) 膵癌診療ガイドライン2013のハイライト国立がんセンター中央病院 肝胆膵内科 科長 奥坂 拓志…

Continue Reading2013年10月27日(日)すい臓がん啓発パープルリボンセミナー2013 in 東京

2013年度パンキャン賞授与

希望は膵臓がん研究からも生まれます。 パンキャンは毎年皆様からいただいた寄付をもとにして、精力的に研究をしている国内の医療従事者支援し、「パンキャン賞」として表彰しています。みなさまのご寄付とご声援は、日夜研究を続ける研究者、医療従事者たちの原動力となっています。   本年度は第44回日本膵臓学会大会(7月25日)において、下記の方々に授与いたしました。 (右から3人目より) PanCAN Basic Research Award(基礎研究)埼玉医科大学国際医療センター病理診断科 山口 浩 先生 PanCAN Clinical Research Award(臨床研究)奈良県立医科大学消化器・総合外科 庄 雅之 先生 PanCAN Young Investigator Award1位(若手研究者賞)奈良県立医科大学医学部消化器・総合外科 長井 美奈子 先生 PanCAN Young Investigator Award2位(若手研究者賞)横浜市立大学消化器・腫瘍外科学…

Continue Reading2013年度パンキャン賞授与

すい臓がんとは

まずはご自分のがんについて知ることが大切です Know Your Tumor Project by PanCAN HQ                            更新日:2021年4月 ■すい臓がんの種類  すい臓には消化液をつくる腺房、膵液を運ぶ膵管、インスリンなどのホルモンをつくる内分泌腺などがあります。消化液をつくる腺房細胞から発生する「腺房細胞がん」、膵管から起きる「膵腺がん」、内分泌細胞から発生する「膵神経内分泌腫瘍」など、「すい臓のがん」といわれる腫瘍は20種類ちかくあります。いわゆる「すい臓がん」は膵管から発生します。このタイプが一番多く、発見が難しいために、見つかったときには進行していることが多いのが特長です。種類によっては進行がゆるやかなものもあり、長期生存が可能なものもあります。例えば、スティーブジョブズ氏のがんは膵神経内分泌腫瘍(pNET)という、ホルモンを産生する細胞ががんになるもので、早い段階で見つけて切除すれば完治できる可能性があります。 ■すい臓がんの発がんモデル  すい臓がんはいくつかの重要な遺伝子変異が起こる段階を踏みながら発生すると言われています。すい臓がんの多段階発がんモデルです。正常な膵管の上皮細胞は、KRAS、TP53、CDKN2、SMAD4などの遺伝子変異が積み上がり、一連の組織学的に定義された前駆体(パ二ンPanIN)を介して、浸潤がんへと左から右へと進行するといわれています。 KRAS遺伝子の変異は、早い段階に起こり、中間段階ではCDKN2(P16)遺伝子が不活性化し、TP53、SMAD4(DPC4)の不活性化は比較的遅く起こると言われています。がん抑制遺伝子であるSMAD4に変異がない患者は、変異のある患者より予後がよくなるとの報告もあります。(Ref1) ■すい臓がんのゲノム医療・プレシジョンメディシン  すい臓がんには多様な遺伝子変異がみられます。そのうち、48%の遺伝子変異には治療薬が存在することがわかりました。例えば、ARID1A/ARID2にはmTOR阻害剤、BRCA2にはPARP阻害剤などです。米国では、ゲノム解析の報告書に記載されている分子標的薬(FDA承認)、あるいは未承認の適応外薬(オフレ―ベル)を使用した治療、あるいはそれらの医薬品を使った治験に参加する患者が増えてきています。  日本では国立がん研究センターの「NCCオンコパネル」に代表されるようながん遺伝子パネル検査の一般的な利用が2019年6月から始まりましたが、米国のように診断時にパネル検査を受けることが推奨されていないため、米国パンキャン本部が進めているようながん遺伝子パネル検査の報告書に触れる機会がまだありません。厚生労働省では、プレシジョンメディシンを早期に国内で実現するために準備を進めてきましたが、すい臓がんの領域では、ゲノム医療ではなく、標準治療を先行させなければならないため、すい臓がんに承認された4つの分子標的薬を使うことができる患者が非常に厳しく規制されており、ゲノム医療のアクセスラグ問題が発生しています。いままでは、承認されないために新薬が使えないという「ドラッグラグ問題」が患者を苦しめてきましたが、日本では新たに「ゲノム医療のアクセスラグ問題」が発生しています。   ■すい臓がんのゲノム解析と遺伝子変異にマッチした治療薬の選択(PanCAN Know Your Tumor)  パンキャンでは2015年よりすい臓がん患者の検体を集めて遺伝子解析をし、遺伝子変異にマッチした治療を推奨する研究(Know Your Tumor)を進めてきました。1000以上の検体が集まった時点で、遺伝子解析された結果とその後の治療選択肢、さらに予後をまとめたKYT研究の結果を米国臨床腫瘍学会(GI-ASCO2018)にて発表しました。遺伝子変異にマッチした治療を受けた患者群(OS=2.58年)は、受けなかった患者群(OS=1.51年)、または標準治療を受けた患者群(OS=1.32年)と比較して、予後が大幅に改善されていたことがわかりました。遺伝子変異にマッチした治療を受けたゲノム医療群 vs 標準療法群では、HR=0.34と驚異的な成績を上げました。(p-value = 0.0000023, HR =…

Continue Readingすい臓がんとは

ボランティアストーリー:小林亜子

  ボランティアストーリー 2013年5月3日小林亜子   ■どうして私がパンキャン(すい臓がんアクションネットワーク)に参加したのか?    私がはじめてパンキャンジャパンさんのお手伝いをさせていただいたのは2012年8月5日【胆道がん医療セミナー】でした。 今思えば、とても不思議なご縁だったと思います。 私は、2005年2月から2006年2月にかけて、「がん患者」、「がん患者家族」、「がん患者遺族」となり、そして、「大切な恩師をがんによって失う」という経験をしました。 どれも悲しい出来事でしたが、2005年9月に亡くなった父は、同年2月の手術で胆のう内分泌細胞がん*と診断され、症例が極端に少ないこと、治療効果のある抗がん剤もよく分かっていないことなど説明を受けたことで、父へのすべての治療が“模索された中からの試み”になると理解しました。 (*胆のう内分泌細胞がん=胆道がん領域の1つ 胆のうがんの組織型のがん)  そのころ私は、自身もがん治療を受けてしまったために、体力も集中力もなく、父親のために良い治療法を探すなど、してあげられませんでした。 私が人生のどこかでがんになることが決められていたとしても、何故父と同じタイミングだったのか…。もし父と同じタイミングでなかったら、西へ東へ奔走することができたかもしれません。最新医療を探し当てて、父が少しでもながく家族と一緒に居られるようにできたかもしれない…。 当時も今も、そんなことばかり考えています。   ■パンキャンジャパンに参加した理由とこれからの想い  パンキャンジャパンさんのやっていることや理念が、私の心に触れたのだと思います。みなさんのお人柄や、人を大切に思うお気持ちが、お手伝いをさせていただく際にとても心地よいのです。 父は亡くなり、私は今、がんを克服してここにこうして生きています。何かをせねば!など強い使命感ではありません。 ただ、「自分の経験したことを必要な人にお届けしたい」「誰かのお役に立てるかもしれない」という思いがあります。  闘病後にメイクとカウンセリングを学び、今はメイクアップセラピストというお仕事をしています。抗がん剤の副作用で眉が薄くなってお困りの方。闘病中のお出掛けも自分らしさを演出したい方。闘病後に社会復帰を目指している方など、それぞれ困ったことをおもちの方々に、寄り添いながら支援していければ、私の経験も活かされるのではないかと思っています。   小林 亜子(事務局の追記:小林様のご熱意で、現在はパンキャンのスタッフとしてご参加されています)   パンキャンのボランティアの登録はこちらから。1日15分からでも参加が可能です。  

Continue Readingボランティアストーリー:小林亜子

サバイバーストーリー:木下義高(アップデート)

サバイバーストーリー:アップデート 2013年12月1日 木下義高    ペットボトルの水を一気に飲み干すほど異様に喉が渇く、ひどいこむら返りが頻繁に起きる。境界型の糖尿病予備軍でもあった私は、かかりつけの病院で血糖値を測ると360mg/dLを越えていた。これは膵臓がんに違いないと、そのとき確信しました。で、まずは闘病記ブログを書き始めたのです。膵臓がんなら助からないだろうから、遺言代わりにブログを残しておこうという、なんとも手回しの良いことです。   忘れもしないが、それが2007年6月11日のこと。その後の超音波検査、膵臓がんの告知については前回のサバイバーストーリーに書いたとおりです。今回は、再発・転移の可能性が高い膵臓がんに、私はどのような考え方で対処してきたのかを書きます。 超音波検査で膵臓に影があると分かってから48時間後には、がん研での最初の診察で膵臓がんと告知されました。診察までの2日間は、必死でインターネットで膵臓がんについて調べたのです。がんの王様。予後はがんの中でもっとも悪く、5年生存率は数%。発見時には手術できないことが多い。この程度の知識はあったので「ぎりぎりだが何とか手術できるだろう」という先生の言葉に、「じゃあ、お願いします」と、その場で手術日を設定していただいた。セカンドオピニオンや家族との相談に時間を浪費している場合ではないと判断したのです。 告知されたときに「頭の中が真っ白になる」「医者の話をよく覚えていない」などと言いますが、私の場合は冷静にメモを取っていましたね。事実を淡々と受けとめていました。迷いは一切ありませんでした。手術しなければ高い確率で死ぬのだから、選択肢がないときに手術以外の方法はないか、どうしようかなど、あれこれ悩むことはない。膵臓がんはいわゆる「足が速い」。時期を逃せば手術ができなくなることもある。こうした考えでした。まだこの世に少しは未練もあるし。人生には、目をつぶって「えい、やっ」で決めなければならないときがあります。 無事に手術が終わったが、気がかりなことは手術ができても5年生存率は15%前後だという統計データです。再発・転移を防ぐために私にできることは何だろうか? インターネットや書籍を漁るが、こと膵臓がんに関しては極端に情報が少ない。パンキャン・ジャパンも数ヶ月前に立ちあがったばかりで、まだほとんど情報らしきものがなかったのです。 最初のころは、がん患者なら誰しも考えるように、がんをきれいに消してくれる「魔法の弾丸」がどこかにあるはずだと探しました。しかしすぐに、そんなものがあるはずはないと知ります。それでも「私はこれでがんが消えた」という言葉は魅力的でした。奇跡的治癒例・例外的患者は確かに存在しますが、問題は、どうすれば私に、彼らと同じことが起きるのかが分からないことです。 治らないがんを宿した患者は少しでも長生きしたいと思う。あわよくば、自分にだけは奇跡が起きて治ることを切に願う。どうすればこのがんが消えて治るのかを知りたいということは、Aという選択をしたときに未来がどうなるかを予測したい、予測できることを期待するということです。しかし、これは不可能です。なぜならば、ヒトの身体もがん細胞も「複雑系」だからです。ボールや大砲の弾丸なら、初速度と角度が決まれば、あとはニュートンの運動方程式に従って、どこに落ちるかが計算して予測できます。しかし、一週間先の天気予報はまず当たらない。それは気象が「複雑系」であり、気温、気圧、地形、湿度、海水温などなどの多数の因子によって左右されるからです。しかもそれが互いに複雑な因果関係を構成しています。だからスーパーコンピュータを使っても天気予報の精度はなかなか上がらない。初期値のちょっとした違いが、結果を大きく左右するのが複雑系の特徴です。奇跡的治癒例はたぶん、なんらかの行為、初期値のちょっとした違いが「バタフライ効果ーブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こす」として治癒を引き起こしたのではないかと考えられます。 人間はひとりひとりが性別、年齢、食生活、生活習慣など全て違います。これらをある一つの病気になっているというだけで十把一絡げにして統計処理し、効いた効かないを表したのがエビデンスです。エビデンスがないということは効果がないのではなく、統計的に効果を証明できないというだけのことです。あたりまえですが、エビデンスの証明された治療法であっても、それが私に効果があるかどうかはやってみなければ分かりません。 逆に、代替療法で科学的なエビデンスの確立されたものは一つもありません。しかし、それは私に効果がないということではないのです。かといってやみくもに何にでも手を出すことは非効率で間違っています。ヒトに対して試験で、ある程度の効果が認められたもののなかから、自分が納得できるものを選ぶべきです。私の考える、やるべきことの優先順位は、 1. 第一に心の平安を保つこと。心の有り様はがんに大きく影響します。プラシーボ効果があるということは、心が身体に大きく影響することの証しです。そして自分なりの「死生観」を持つこと。「死」に怯えているとネシーボ効果(プラシーボ効果の反対)で悪影響を被ります。 2. 次が、適切な運動。運動の効果には多くのエビデンスがあります。とにかく「歩け、歩け」です。 3. そして食事と栄養。がんと戦うには体力が必要です。必要な栄養素を過不足なく摂り標準体重を維持するよう努めること。サプリメントや極端な食事療法、ジュース療法などはエビデンスの有無をよく考える必要があります。 食事療法などの「もの」に頼るのは、優先順位としては低いのです。しかし、これが一番だと考えているがん患者が多いです。がん細胞ができたときに、すでに運命は決まっている。だから放置するのが一番だと説く医者もいますが、がん細胞にニュートン力学を持ち出すような荒唐無稽な運命論です。がん細胞も人間の身体もそんなに単純なものではない。宇宙以上に神秘的です。これをやれば絶底に大丈夫だというものは、複雑系にあるはずがないのですが、がんに影響を与えうる可能性を秘めた方法はいくつもあるのです。 こうした考えで、私はこの6年間を過ごしてきました。 「がんとは闘え、死とは闘うな」なぜなら、死と闘って勝利した人は、歴史上ひとりもいないのだから。   >>最初の他の投稿サバイバーストーリー:木下義高はこちらから。>>木下さんのブログ『膵臓癌サバイバーへの挑戦』 >>パンキャンへ皆様のストーリーをお寄せください  

Continue Readingサバイバーストーリー:木下義高(アップデート)

サバイバーストーリー:木下義高

サバイバーストーリー 2013年4月12日 木下義高    膵体尾部を切除してから6年になろうとしている。いま振り返ると、何度かの転機があった。のどが激しく渇き、足がこむら返りを起こす。血糖値を測ったら急激に上がっていた。ここで膵臓がんを疑うかどうかが、早期発見の明暗を分けることになった。掛り付け医の勧めもあって、超音波で膵臓を丹念に診てもらった。明らかに主膵管に異常がある。CTでも同様の所見だった。  その日のうちに、電話でがん専門病院に診察予約を入れた。診察までの2日間はパソコンにかじりついて、インターネットで膵臓がんの情報を漁りまくった。 2日後のがん専門病院でのCT、血液検査の結果は、ステージIIIの浸潤性膵管癌である。「切れますか?」「ぎりぎりだが何とかなるでしょう」「じゃあ、お願いします」。 こうして、その場で2週間後の手術日を決めた。 (1)がんに関して基本的な知識を準備しているか? (2)必要なときに正しい知識を得ることができるか? (3)知識をもとにして、正しく判断し選択することができるか?   これらが、がん患者の生死を分けることもある。私自身は、概ね満足できる選択をしたと考えている。  膵臓がん全体の5年生存率は約5%だ。予後の厳しいこのがんでも、生存率曲線で恐竜の尾のように延びた右端には必ず「例外的患者」がいる。統計は平均を表わしているだけで、患者の個性は無視している。しかし、私たちは統計データではない。鼻の形が一人一人違うように、がん細胞の性格だって違うはずだ。誰にでも恐竜の尾=例外的患者になる可能性がある。   がんと戦うことは、喫緊の課題には違いない。しかし、がんとの闘いだけに費やした人生なんてつまらない。”がんが治ったら”いつかはやりたいと思っていることがあれば、”今”それをやれば良い。誰にでも治る可能性がある。だから希望を持つべきだ。しかし、往々にして希望は執着に変りやすい。  人間には力の及ばないことがある。今やるべきことをやり、その結果を受入れる。ま、こんなものか、との思い切りが必要なときもある。 人間には「死」があるからこそ、困難に挑戦できる。永遠の命が与えられたとしたら、それは何でもできるということだ。しかし実際には、全てにおいてやるべきことに期限がないということでもある。あらゆることを先延ばしにできる。「今ここ」に、私たちに与えられた課題と義務を果たすことが、唯一人間として実行可能なことなのだ。

Continue Readingサバイバーストーリー:木下義高

リサーチャーストーリー:宮林弘至

  リサーチャーストーリー 2012年11月3日宮林弘至 膵発癌モデルマウスを用いたゲムシタビンとEGFR阻害剤エルロチニブ併用療法の効果とメカニズムの検討 東京大学消化器内科 宮林弘至 はじめに 膵癌に対する化学療法で、最近では分子標的薬を組み合わせた治療が検討されており、これまでの数々の検討の中で、ゲムシタビンとEGFR阻害剤のエルロチニブの併用がゲムシタビン単独と比較して、分子標的薬では唯一、統計学的有意に生存期間を延長した。その生存延長期間はわずかであったが、他がすべて失敗に終わった中で唯一有意に生存期間を延長したことには意義があるといえる。しかし、膵癌におけるエルロチニブの効果の予測因子はいまだに解明されていない。大腸癌ではKRAS変異を有する患者ではEGFR阻害剤が無効であることが示されているが、膵癌では9割以上の患者がKRAS変異を有する。また非小細胞肺癌ではEGFRの活性化変異を有する患者でEGFR阻害剤が有効であることが示されたが、膵癌ではEGFRの活性化変異はまれである。本邦でもエルロチニブがようやく膵癌に保険適応となり、エルロチニブがゲムシタビンとの併用でなぜ膵癌に効果を示すのか、そのメカニズムを解明することは今後の膵癌治療にとって重要と考えられる。  マウスモデルを用いたエルロチニブ併用療法の効果・メカニズムの検討 近年、膵癌で臨床的にみられる遺伝子異常やシグナルの異常をマウスの膵臓に導入することで、ヒト膵癌類似の病変を呈するモデルが進歩してきた。我々は膵癌で90%以上に認められるKRAS遺伝子変異と50%以上で遺伝子変異・欠失が認められるSMAD4の上流のTGF-β2型受容体のノックアウトを膵臓特異的に導入したマウスモデル:Kras+Tgfbr2KOマウスを報告してきた。このマウスは全例で急速に膵癌を形成し、腹部膨隆、体重減少、腹水貯留、黄疸などのヒト膵癌類似の症状を呈し、その組織型は、豊富な間質を伴い線維化が著明な分化型腺癌でありヒト膵癌に近いモデルといえる。    このモデルマウスにゲムシタビン単独、ゲムシタビン+エルロチニブを投与し生存期間を比較すると、平均生存日数は無治療群45日、ゲムシタビン単剤60日に対し、ゲムシタビン+エルロチニブ併用74日と生存期間が大きく延長し、本モデルは化学療法感受性もヒト膵癌に類似していると考えられた。薬剤投与後に膵組織を回収し、免疫染色や、ウェスタンブロットを用いてゲムシタビンとエルロチニブが受容体や細胞内のシグナルへ与える影響を検討すると、ゲムシタビン単独群ではEGFRとその下流のシグナルのERKが活性化し、エルロチニブ併用投与群でその活性化が抑制されることがわかった。ゲムシタビンによるEGFR-ERK経路の活性化のメカニズムを検討するため、受容体型チロシンキナーゼのリン酸化アレイでEGFR以外の受容体型チロシンキナーゼへの影響を調べると、EGFR発現亢進のあるゲムシタビン投与群でErbB2の活性化を認め、エルロチニブ併用でそれが抑制されることがわかった。Erbb2はEGFRとヘテロダイマーを形成して活性化するが、ゲムシタビン投与がEGFRとErbB2のヘテロダイマー形成を亢進させ、エルロチニブがそれを抑制することが示された。さらにゲムシタビン投与がEGFRリガンドの分泌・発現を亢進させることも示された。以上よりエルロチニブの併用効果のメカニズムの一つとして、ゲムシタビン投与でEGFRリガンド分泌亢進・EGFR/Erbb2ヘテロダイマー形成促進を介してEGFR/Erbb2-ERK経路が活性化されるが、エルロチニブを併用投与することで、その活性化が抑制されることが考えられた。 おわりに  膵癌における治療は未だに発展途上であり、Kras+Tgfbr2KOモデルのようにヒト膵癌に類似したモデルを用いた検討は、治療薬の効果やメカニズムを解明するのに有用である。そして効果の予測因子、より効果のある治療薬の組み合わせ、より効果の得られる患者集団の特定など臨床的に重要な事項にも新たな知見を与えてくれる可能性があり、実臨床と連動させていくことが有用と考えられる。

Continue Readingリサーチャーストーリー:宮林弘至

国内ニュース:術後化学療法 JASPAC試験について

【術後化学療法 JASPAC試験について】静岡がんセンター上坂克彦先生(静岡がんセンター 副院長 兼 肝・胆・膵外科部長)のコメントをご紹介します。    「今回の私たちの研究結果は、当初の私たちの予想を大きく上回る、たいへんすばらしいものでした。従来、膵がんの手術の後には、再発率を下げるためにゲムシタビンによる補助化学療法(抗がん剤治療)を行ってきました。  手術の後にゲムシタビンを使うと、使わない場合に比べて、明らかに再発率が下がり、結果として生存率が向上するからです。しかし、今回の研究結果は、ゲムシタビンのかわりにTS-1を用いると、ゲムシタビンよりも再発のリスクを減少させ、死亡のリスクを44%減少させること、結果として生存率が一層向上することを明らかにしました。  難治がんの代表である膵がんに対する手術後の死亡のリスクをこれだけ飛躍的に減少させた研究は近年にはなく、画期的な進歩と言えます。また、TS-1は飲み薬であり、有害事象(副作用)の頻度もゲムシタビンと遜色なく、使いやすい薬と言えます。  今回の研究結果に基づいて、日本の膵癌診療ガイドラインが書き換わることを期待しています。またこの結果が、膵がんに苦しむ患者さんやご家族にとって、大きな福音となれば幸いです。最後に、今回の研究に参加してくださった患者さん、そのご家族、そして私たちの研究グループ(JASPAC)の参加施設のスタッフの皆様に感謝申し上げます。」   膵がん患者のS-1(抗がん剤)術後補助化学療法の臨床試験で生存率が大幅上昇 静岡県立静岡がんセンター公益財団法人静岡県産業振興財団 ファルマバレーセンター

Continue Reading国内ニュース:術後化学療法 JASPAC試験について

ボランティア募集 (2021年4月)

WE NEED YOUR HELP!

いまや全がんの5年生存率は70%になると言われています。しかし、すい臓がんは僅か9%。

すい臓がんで亡くなる人がいない世界をつくるためには、皆さんの力が必要です。やらなければならないことは山積しています。

一日でも早く、米国FDAに承認された、より奏功する薬を日本の患者に届けるためには、日本の承認システムを改善する必要があります。特に精密医療(Precision Medicine)と言われるゲノム医療は、がん遺伝子パネル検査が受けられないとドライバー変異がわからず、それに関連した治療の選択肢がわかりません。しかし、現在の体制下では、5年生存率がわずか9%と言われるの標準療法が終わってからでないとがん遺伝子パネル検査が受けられません。

米国ですすめられているゲノム医療では、まず、診断時にパネル検査を受けて、治療の選択肢を調べます。もし分子標的薬などの医薬品が使える遺伝子変異がなければ標準治療を使いますが、遺伝子変異にマッチした治療薬があれば、迅速にそれを使って治療を受けることができます。日本もそのようなシステムにしなければ、患者は救われません。日本に多くて外国に少ない膵臓がんの研究を日本の研究者にしていただくためのがん研究予算増額を訴えたのが昨年のナショナルアドボカシーデー活動でした。日本発の膵臓がんの新薬が開発されると一番助かるのは日本の患者さんです。お薬がなくなり、後は死ぬことを待つだけだった時代から、がん細胞の特徴にあわせた治療薬が選択できるゲノム医療の時代に入るためにも、診断時にがん遺伝子パネル検査が受けられることが大切です。それを実現するためには、要望書の署名を集め、国会議員と面談して、膵臓がん患者さんが承認された新薬にアクセスできなくて困っていることを説明し、年間3万4000人以上が亡くなっている現状を訴え、ドラッグラグ、アクセスラグ解消を訴えていきます。それがナショナルアドボカシーデー活動です。ぜひ、ご参加ください。

 

私たちの活動にご賛同いただける方、NAD活動の参加できる方を、いま募集しています。>ボランティア申込

(more…)

Continue Readingボランティア募集 (2021年4月)